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シン・ウルトラマンのapapattiのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

泣いた

人類の克己心を試されるシーン。
外星人が次々とやってきて技術力の差を見せつけてくる。
武力で勝てないことを、技術で勝てないことを知らしめてくる。
それをやったのはメフィラスで、ウルトラマンがそれは撃退するわけだが、ゼットンの出現でもう人類にできることはない、と悟り絶望する。
ベータシステムを既製品ではなく人類の手で作るのだと技術を継承するウルトラマン。

そのために人類の叡智を結集するのだ、とたきくんが立ち上がるシーン。ここにガツンと来てしまった。
なんかス~って泣いた。

ベータシステムの仕様を解析し、ゼットンをプランクルーム(だっけ)に飛ばすという技術転用を生み出す。
命を懸ければことをなせる、そこまで状況を持っていくのすら本来的にはこれくらい難しい状況なのだ。
核兵器を宇宙まで持ってって爆破したアトムとか、反物質兵器を海底に沈めるホワイトラビットとか、運べば住む、という以上に描かれる脅威のレベル感も上がってきている、というのが人類の想像力の飛躍であるのかもしれない。

柳田理科男先生の空想科学読本で育った身ととしては、ウルトラマンで描かれるエネルギーがどれほど荒唐無稽なものであるのか、というのは理解しているつもりである。
実質科学技術については及び知るところではないであろうが、それでもそのエネルギーを運用している側の意図や、理屈がストーリーとして見事に落とし込まれていたのは本当にさすがだなと思う。
1兆度の火球をはくウルトラマンが負けたゼットン、という存在までは知ってる身としては、その存在が人間というリソースの兵器転用を防ぐための戦術的撃滅に意図するもの、という設定にはぇ~~となってしまった。確かにそこまでの破壊兵器がポンと地球に来る意味よくわからんもんな。
ほんで人間の兵器転用がベータシステムを用いた巨大化で、かつ現状の人間の科学力ではキューティクル1枚はがせない硬度の技術力という、いや進撃の巨人かいという流れも、ゼットンが空にうっすらと見えた状態で準備をしてるってビスケットハンマーかいという、知ってるSFの総力戦演出みたいなのも結構胸が熱くなるのかもしれない。パクリなのかパクリじゃないのか、という議論は知らんけど。これって誰がどう決めるんでしょうね?

冒頭から思い起こせば、カイジュウがダイジェストでバンバン駆除されていくところ、このテンポ感から引き込まれる。
シンゴジラに比べればカサイタイはかなりポップな印象で、激やばビームとか放射能きちぃっすわとかめっちゃ言いまくってて、この辺はウルトラマンというヒーローが明確にいるからこそできた構図なのかもしれない。シンゴジラはもっと厳格なイメージだったけど、天災との闘いだから茶化せなかったんだと思う。

それにしてもウルトラマンが暴露されるタイミングはうすうす感づいてるんでしょ?って感じであっさりだったし、ざびらす?、メフィラスの2戦でいったん結構おなか一杯になってたところにまさかゼットン戦まできたのがマジでプラスウルトラって感じだ。
メフィラス戦で、あとは人類に任せたつって去っても全然成り立ってたもんね。ストーリーとして。
過ぎた技術から、あくまでエゴと理解しながら人間を保護するためにそれを奪って帰させるって。
じゃあなんでベータシステムの技術論理を渡すのはいいんだよっていう。そこらへんに人間と半分合体したウルトラマンのそれがにじみ出てるよね。折衷案っちゃ折衷案なんだよな。メフィラスの言う人類の自衛のための力というのを授けるところは同じだもんな。

二回変身することで命と引き換えにバグ技みたいな無敵攻撃が発生するってのもシンプルでいいよな。すごい練りこみを感じる。尺の都合もあったんだとは思うけど、ここで中途半端に人間のすごさみたいな奇跡を遂行する作戦みたいなのがなかったのは個人的にはよかったと思う。無人在来線爆弾でゴジラこかしてお口にストローで毒流すってヤシオリ作戦、無茶でしょ。それはそれで人類の叡智というテーマ性があったにせよ、今回の敵は知性のある政治的な物理的な攻撃であって、そこに対抗する科学力を身に着けるということは地球内でまたさらなる政治を生むであろうことは想像できちゃうもんね。
そうでなくてもラスト地球の科学力に気付いた諸宇宙がやってくるっていってたもんね。ウルトラマンの言う通り、科学力としては未熟という建付けが必要なんだもんな。

とかく、庵野秀明が手掛けるテンポの良さ、少ない会話から政治的に難しい状況を想起させるセリフ回し、文字でガツンと出す情報、もういっちょおかわりでやってくる山場、ネットミームをわしづかみにするキャラづくりと、とにかく見どころがいっぱいでよかったです。

壁内人類の話だったのかという、実写版進撃の巨人の最高バージョンでした。
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