群青

シン・ウルトラマンの群青のレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.1
2022年劇場鑑賞7作目。


ウルトラマンのシリーズは門外漢。前にウルトラQがあってとか、こんな怪獣と戦ってとか、最終的にゼットンに負けてとか、それくらい。どんな話があったかは細かく知らない。そのくらいの程度。

一つ印象的だったのは子供の時、最初に何かを観て泣いてしまったとハッキリ覚えているのがウルトラマンだった。
何話かは知らないし調べたらわかるだろうが、ピグモンがレッドキングに殺されてしまうエピソード。
小さなピグモンが無惨に殺されてしまい悲しくて泣いてしまった。なんでこんな悲しいことをするんだろう、ピグモンは何も悪くないのに。という感覚だった笑
むしろちゃんと観た話はこれくらいかもしれない。

ゴジラは好きなのだが、ウルトラマンはハマることができなかった。
多分、理由は自分の中のリアリティライン。
怪獣たちのようなめちゃくちゃデカいバケモノがこの世界にいるかもしれない、というのは納得できたが、そこに銀と赤の配色の人型の巨人が怪獣と肉弾戦をする、というのは飲み込めなかったからだと思う。
だからこそ逆に仮面ライダーはまだ飲み込めた方。異形と言ってもサイズ感が人類と同じだから。


こんな感じだが、まあシン・ゴジラとほぼ同じ座組みで制作され、予告も申し分なかったため観に行った。


良かったのは冒頭。
特徴的なウルトラマンのタイトルはやるだろうなと思っていたが、直後始まったのはウルトラQのあのテーマ。あのテーマに沿って怪獣たちが矢継ぎ早に出現。応戦する日本政府がダイジェストで描かれる。
この時点で、シン・ウルトラマンはこういうリアリティですとハッキリ打ち出しているのが気持ちよかったし、リスペクトもあって感動した。
よもやシン・ゴジラの着ぐるみを改造させたようなシン・ゴメスを拝めるとは笑


それが終わるといよいよ本編。
シン・ゴジラのようなテンポ感とカメラワーク、小難しい言葉を説明的に繰り出していく。シン・ゴジラの自分の好きな部分は踏襲されている。良い。
出てくる怪獣も説得力のある選定となっている(展開的に後になってその必然性わかる)
また、長澤まさみの巨大化という、ファンにとってはやるかもしれないけどやるかなぁ、という部分をしっかり描き、怪獣だけでなくザラブ、メフィラスといった(表面上では)友好的な姿勢を示す外星人も現れる。
飽きさせないバラエティに富んだ選定だった。

特にメフィラスはこの作品のかなり美味しい部分を担っている。
山本耕史の普通の顔をしているはずなのにどこか胡散臭さを感じる、という魅力を完全に倍増させており、台詞回しも特徴的、割り勘という人間臭さも持ち合わせていて素直に好きになった。あの飲み屋はマジで行きたい笑
聖地巡礼、私の好きな言葉です笑


さらに出るとは思っていたが、宇宙恐竜としてではなくまさかの兵器として出てきたのがゼットン。
原典とはまた別の意味で絶望感をもたらせてくれるし、使用するのがよりによってゾーフィという展開。
なんだよゾーフィって。ゾフィーじゃないのかよ、と思ったら名前もこの展開も元ネタが誤記というマニアックさは流石としか言いようがない。
この元ネタを知らなければ味方側のゾフィーが人類滅亡のためにゼットンを使用するというのが納得できなかったかも。


良かったところはこれくらいにして、合わなかったところ。因みにシン・ゴジラはオールタイムベストくらい好きな作品。

あっちと比べてこっちはメインキャラクターそれぞれの性格付けがかなりされている。それは後半の、なぜウルトラマンが人類に肩入したいと思ったのか、を納得させるためにキャラを魅力的に描き感情移入させるためだと思うのだが、それに完全に失敗していると思う。
シン・ゴジラではドラマシーンが極力廃されたにも関わらず、キャラクター同士の掛け合いでこの人はこういう性格なんだと分からせ、逆に魅力的になっていったのに、こちらでは会話してるのに仲良くなっていく感じが全くない。

ウルトラマンが入っている斎藤工とバディを組まされた長澤まさみはバディバディと結構な頻度で言いながら、バディを組んで何かをするという描写がない。むしろバディを組みたいのに単独行動をする斎藤工に何やってんだかとため息をつくシーンすらある。
それなのにバディだからという理由で長澤まさみを信じる斎藤工。全くもって意味不明。

また、特撮オタクな有岡大貴はシン・ゴジラでいう高橋一生のポジションだが小うるさいだけでそれ以上がない。
早見あかりも西島秀俊もキャラクターの性格はこういう性格です、と教えてくれるが以上の好きにさせてくれるようなシーン・エピソードがない。
禍特対の面々の会話自体はシン・ゴジラより多いはずなのに絆が感じられない。

唯一上司に当たる田中哲司の、中間管理職的な苦労を見せながら部下の側に立って行動する上司の鑑的な感じを見せてくれるのでカッコよかった。

これはキャラクターの性格づけが所謂アニメ的で台詞もなんだかアニメに出てきそうな台詞回しだから逆に鼻につきまくったからだと思う。
むしろアニメだからデフォルメでも許せたところが実写だと許せなくなってしまう。
ヒステリーで取り乱す有岡大貴も、ケツを叩いて心機一転する長澤まさみも、ストレスがかかると暴食に走る早見あかりも、アニメなら許せたかもしれない。
だから特に長澤まさみ周りのセクハラ描写がキツかったのだと思う。

また、さまざまな怪獣を出すために原典のエピソードを数珠繋ぎにしたのはよかったが、それによって話はその都度リセットされるわけで、感情もリセットされてしまう。シン・ゴジラのようにゴジラ一体をどうするかを最後までやるのとは事態の重みが変わってしまう。ここは悪いところが出てしまったと思う。

シン・ゴジラよりドラマ部分を打ち出そうとしているのにシン・ゴジラより感情移入できないのは、描き方に失敗しているとしか言いようがないのではないか。
正直観ながら心の中で色々ツッコミしてしまい、みるみる自分の中で落胆していくのが辛かった。
そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。と思ってしまう。

ウルトラマンとしての特撮の力の入れ込みやリスペクトも大いによかったのに、肝心の中身が微妙だと辛い。
本当メフィラスだけは良かった。


CGは特に気にならなかったかな。
歌は…よく分からない。
可もなく不可もなく。


三部作も想定していたみたいだし興行収入もまずまずなのでやるならやって欲しいけどどうだろうか…

そんなにウルトラマンを好きになれるのだろうか?
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