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シン・ウルトラマンのambiorixのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.5
記念すべきFilmarks1500本目の映画は『シン・ウルトラマン』!🥳
言わずと知れた『ウルトラマン』シリーズを庵野秀明と樋口真嗣の手でもってリブートした作品…なんですが、いかんせん僕はウルトラマンなるコンテンツといっさいの接点を持たずにここまで生きてきた人間なので、このシリーズについて持っている知識はといえば、スペシウム光線と3分経ったらピコンピコン鳴り始めるカラータイマー、たったこれだけ。しかも後者の設定は本作『シン・ウルトラマン』からはオミットされているってんですから、いきおいスペシウム光線一本槍で本編に挑むしかなくなるわけで、ついていけるかな…と不安だったのですが、その辺に関しては思い過ごしでした。そりゃもちろん、冒頭のタイトルロールの演出をはじめとして随所に散りばめられた「これってたぶんファンへの目配せなんだろうな」みたいな要素を昔っからのウルトラマンファンと同じ目線で楽しむことはできないんだけども、シリーズ初見の観客の視聴にも十二分に耐えられるつくりにはなっているなと感じたし、少なくとも「あっ、ウルトラマンってこんな感じなんや」程度の雰囲気は味わえたような気がします。
ところが、この作品が面白かったかっていうと決して面白くはなかった。かと言ってめちゃくちゃつまらなかったかといえば別につまらなくもなかった…というのは大方の人がだいたいそういう感想に落ち着くんじゃないですか。激烈なファンがいない代わりに激烈なアンチもいない、みたいなね。ここからはとりあえず、この作品におけるアカンかった点とよかった点をいくつか書いていこうと思いますが、まずはアカンかった点から。
その最たるものが、いかにもオタクっぽい、空疎なわりにやたらと説明過多で早口なセリフ回しですよね。あれは庵野秀明と樋口真嗣のどっちのイズムが入ってるのか知らないけれども、このコンビの前作『シン・ゴジラ』に引き続いて本作でもやっぱり健在で、全編に渡って展開される実相寺昭雄アングルとセットでもって徹底することでもはやある種の美学を形成しているとすら思う。ただし、『シン・ゴジラ』の場合は、オタクたちのおしゃべりが転がって転がって最終的にゴジラを倒すためのアイデアに深化していってカタルシスを迎える、いわばストーリーの盛り上がりと劇中で繰り広げられる会話とがきちんと噛み合った構成になっていたのに対して『シン・ウルトラマン』の方はそうなっておらない。いかんせん敵であるところの「禍威獣」が、お話が後半に向かってゆくにつれてどんどんどんどん人間の手に負える代物ではなくなってしまうので、超自然的な力同士の戦いに人間の出したアイデアを差し挟む余地がなくなってくるわけですね。いちおう、ラスボスを倒したのは世界中の学者の叡智を結集したからだ、なんてな説明がつくにはつくんだけど、それすらなんか唐突で取ってつけた感は否めなかった。物語の全体を覆う空疎なおしゃべりが文字通り空疎なおしゃべりでしかなかったことに対する失望感。
そして、第二のアカンかったポイントも致命的で、それが何かというと「傍観者であるはずのウルトラマンがなんで人間に入れ込んじゃってるの?」問題。これに関しても、ウルトラマンとゾーフィが謎空間で喋ってる最後の方のシーケンスで一応の答えは出されるわけだけど、あんなんで納得いくか? いやさ、本人は納得したのかもしれないけど、それと観客が納得するかどうかってのは完全に別物だし、実際にウルトラマンが出したあの答えは説得力をかけらも持ちえておらなかったように思う。仮にそうしたいんなら、平場のシーンでなんの変哲もない一般人の姿を丁寧に時間をかけて描いて、人間は滅ぼすには惜しいな、守るに値する種族だな、と思わせる何かがないとダメだった。せめて禍特対の面々だけでもそう感じさせてほしかったのに、空疎なおしゃべりにかまけて終わっちゃうんだもんな。ウルトラマンが人間愛に目覚めるきっかけになったアイツの自己犠牲にしたってそうで、観客はアイツが生前にどういう人物だったのか、どういう経緯があって自己を犠牲にしたのか、といった最低限の情報にすらアクセスできないので、ウルトラマンと同じ位相で人間たちに感情移入することが出来なくなってしまっているのよね。
第三は、ストーリーのパッチワーク感。この部分について多言を要する必要はないかと思いますが、オリジナルのウルトラマンから持ってきたであろうエピソード同士に有機的な連関がなく、お話のパターンも基本的に、出てきた怪獣をウルトラマンがなんとかする→出てきた怪獣をウルトラマンがなんとかする…の繰り返しで、なにか段取りを淡々とこなしているように感じてならなかった。一本の映画として捉えた時にこれはちょっとどうなんだろう?と思うし、第一、第二のアカンポイントと相まって、ここまでくるともう人間のあずかり知らないところで異星人同士が勝手にわちゃわちゃやってるようにしか見えないんだよな。
そして肝心のよかった点は…よかった点が…特に思いつかない😰ので、アカンかった点を述べた箇所で褒めていた分をもって代えさせていただきます😔
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