きゃんちょめ

シン・ウルトラマンのきゃんちょめのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
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【『シン・ウルトラマン』について】

私は昔からほとんど自分が見た映画を酷評することはない。そういうポリシーだからである。しかし、あえて言うが、『シン・ウルトラマン』は酷い作品だと思う。

私は『シン・ゴジラ』については、いたるところに見られたエリート主義がとても鼻についたけれど、その点以外の、特に東京破壊描写が面白いなと思った。だから、『シン・ウルトラマン』も、映画館でお金を払って見てきた。だから、私にこれを言う権利はあると思う。『シン・ウルトラマン』は、あまりにもひどい作品だった。その理由を以下に述べる。

まず、長澤まさみ演じるフジ・アキコ隊員を巨大化させたのは、女をできるだけ巨大化させたいというフェリーニ以来の特殊な性癖であるからいいとしても、それを観客に意識させぬよう、あえて長澤まさみを人の尻を平気で叩くような人間として演出しておき、それでいて長澤まさみのパンチラを執拗に見せようとしてくる点で、変態であることを恥ずかしがっていて、不快だった。自分が変態であることを恥ずかしがっているならばそんなセクハラかつ変態的行為はやらなければいいのに、しかしあえてそのようなセクハラかつ変態的行為をやりはするところが非常に下品だと思った。この映画の製作者が、自分の性的欲望を、恥ずかしがりつつ満たしたいと主張してくるのが単に不快というだけでなく、そのような欲求を観客まで持っているでしょう、満たしてあげますよとニヤつきながら言ってくるその無神経さに腹が立った。庵野とかいう人は、自分のことをなんなら気がきく演出ができる人だとでも思っているのだろうが、それはとんだ勘違いであると誰かが教えてあげてほしい。

さらに、この作品は、原作上では地球防衛軍の本部がパリにあったのだから、地球上のどこにでも攻めてくる可能性がありえた怪獣たちを、日本にしか攻めてこないという設定してしまっていた。しかもそれを正当化するために、この作品には、怪獣発生装置なるものが日本の地下に埋められているという、あまりに醜悪で、短絡的で、頭の悪いナショナリズムの発露が見られた。怪獣は日本の文化であり、日本だけのものであると高らかに宣言することが日本のオタクたちの代弁者としてのかっこよさだと思っているのだろうが、そもそも観客はそんな宣言をしてほしいとは期待していないと思う。

『シン・ウルトラマン』などとわざわざ「シン」とかいう言葉を多用することで自分のウルトラマンだけが本当のウルトラマンだと言いたいのだろうが、監督はそのような肥大した承認欲求を観客にこれでもかと見せつけることが作家性だと勘違いしているのではないだろうか。正直、作家性でもなんでもなく、むしろよくありがちな痛いオタクのひとり語りにしか見えなかった。私は『ウルトラマン』シリーズについてよく知らない初心者だが、すくなくとも初心者には到底楽しめる作品ではなかった。

「お前が楽しめなかったのはお前が『ウルトラマン』シリーズについてよく知らない初心者だからだろ」という反論もあるだろうが、その場合、この作品はものすごくせまいコミュニティの内輪ウケを狙っている作品だったことになる。もしそうなのであれば、なおさらその人たちは『ウルトラマン』シリーズを愛しているのではなく、良さを広めたいのでもなく、単に『ウルトラマン』シリーズの細部の情報に詳しい自分達のことが好きなだけなんですね、と私は思う。
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