にしやん

乱反射のにしやんのレビュー・感想・評価

乱反射(2018年製作の映画)
2.8
強風によって街路樹が倒れてベビーカーが下敷きになってまう死亡事故が発生して、被害者の子供の父親である地元新聞記者の主人公がこれは事故ではなく事件やということで、独自に捜査を進めるサスペンスもんやな。事故の発生の瞬間を軸に、前半はその事故に至るまでの過程や因果関係を丁寧に辿り、後半はその責任がどのにあんのかをさかのぼっていくような構成になっとるわ。一つ一つは普通の人等のほんの些細な身勝手や無責任な行動やねんけど、それが積み重なっていくことで、取り返しのつかへん事故が引きおこされる仕組みを描いてるな。

みんな誰かて日常の中で小さな嘘とか、ちょっとした悪いことか、やったことあれへん人はおらんと思うわ。わしかて胸に手を当てたら後ろめたいことかてあるわ。みんなやってるやろっちゅうことで罪悪感すら感じてへんことって、みんなそれなりに抱えてるんとちゃうかな。せやけど、もしそれらが遠因になって事件や事故が起きてしもた時に、それに対して仮に責任を問われたかて元々自覚があれへんさかい、責任の重さを感じることは急にはでけへんねん。せやから、この映画の中に出てくる人等の無関心、無責任について腹は立つけど、正直正面切って責められへんとこもあるわ。それに、自分の知らんとこで自分が誰かを傷つけてる可能性もあるんとちゃうやろかと、ちょっと怖い気もしたわ。この映画観た人皆が自分の身を今一度振り返って考えなあかんというような話やな。

映画の出来のほうやけど、映画として撮ったもんをテレビ用に編集したみたいなことを上映後のトークショーでテレビ局のプロデューサーが言うてたけど、印象としては映画とテレビの中間っちゅう印象やな。いやー、これ映画やったら無いわっちゅうシーンがいくつかあったわ。おばちゃん等の住民運動のシーンはなんぼなんでもチープすぎるで。あれはないわ。街の中にエキストラが全然おらんシーンなんかも気になったわ。それと、カメラワークかてやっぱりテレビを意識してか、上半身から上、特に顔アップなんかもそこそこ多かったように思う。カメラを引いた雄大な遠景というんもないしな。それと、中盤にもういっぺん冒頭の時間軸に戻ってきた時に、冒頭のシーンと同じ映像を使てたとこなんかも、テレビ用やということで分かりやすくしたんかな?あれはちょっと編集として芸がないわ。いっそ省略しても良かったんとちゃう?わしにはただくどいだけやったわ。

それと、一番腑に堕ちへんのは、終盤主人公の妻夫木の責任追及の熱が急に冷めてまうとこや。なんでこんなに気が変わったんかさっぱりわからへん。原作ではちゃんとその辺のことが書いてあるんかもしれへんな。この映画の場合はここが完全に抜け落ちてて、観てるもんが完全に取り残されてまう。これは役者のせえやなく、完全に脚本の問題。単純に映画として描かなあかん決定的に必要な部分がごそっと抜け落ちてるんやと思うわ。ここの妻夫木の心境の変化の理由がよう分からんもんやから、終盤の「サンドイッチ」のシーンで妻夫木と井上真央がなんぼ演技で頑張ってもいまいち共感でけへん。もやもやや。

映画としてのメッセージはええと思うねんけど、社会派ドラマでいくんか、サスペンスもんでいくんか、ヒューマンドラマでいくんか、どれもこれもどっちつかずで何もかもが中途半端やな。わしはもっとサスペンスもんでいくべきやったと思うけどな。犯人捜しをもっと立たせるべきやったんとちゃう?どやろ?それに、ラストシーンの「公園のゴミ箱」にしたかて、まあ言うてる意味は分かるけど、最後まで中途半端。メッセージが弱すぎる。何か煮え切らんわ。

それにしたかて、妻夫木何で気変わってしもたんやろ?
石井裕也、どないしたんや?大丈夫かいな?
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