Mikiyoshi1986

1917 命をかけた伝令のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.8
まるでタルコフスキー監督『僕の村は戦場だった('62)』を想起せずにはいられない、WW1のノーマンズランドを次々に再現…!
そこを駆け抜ける決死の伝令兵をワンカット風に追っていくカメラ。
その臨場感と没入感は、聖書を模したあの傑作SF映画『トゥモロー・ワールド('06)』の長回し戦闘シーンに匹敵するほどの画期的な映像体験でありました。

撮影監督は『ブレードランナー2049('17)』を撮ったロジャー・ディーキンスであり、思えばその『ブレラン49』でもタルコフスキー的アプローチが多く詰め込まれていましたね。
そして本作でもやはり前述した『僕の村は戦場だった('62)』や『アンドレイ・ルブリョフ('66)』など、タルコフスキーに起因する映像アプローチは少なくはなかったように思います。

また、本作はサム・メンデス監督の祖父から伝え聞いた従軍話がベースとなっていますが、
それと平行して旧約聖書に基づく片鱗も見受けられました。
ざっくり言うと、
『4月、イスラエルの民が「主の契約の箱」を担いでエジプトの荒野を抜け、最大の難所であったヨルダン川も塞き止められたお陰で無事に渡渉でき、ようやく約束の地カナンに辿り着く』
といったもの。

そして後半では、やはりそのヨルダン川渡渉(I'm only going over Jordan)のキーワードが込められた古い宗教歌『Warfaring stranger』がここぞとばかりに披露されていました。
(流れ的にはつまり「もし戦死してもちゃんと天国に行けるから、安心して戦ってきなさい」という、日本陸軍でいう『同期の桜』の「靖國で会おう!」みたいな意味合いね)

聖水、イバラのような有刺鉄線が刺さる掌、盲目からの復活、ミルク、やんわり処女懐胎の聖母を彷彿させなくもない母子、燃える廃墟と十字架、生命の樹などなど、随所にイコン的記号も散見。

ぐるりと、オープニングに帰結するかのような幕切れもお見事!
他にも然り気なくも意味深で、細かい演出の中に気になる点がいくつかあったのでまた鑑賞する機会があればじっくり精査してみたいところです。
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