喜連川風連

1917 命をかけた伝令の喜連川風連のレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.0
縦に突撃する部隊に対して横向きに主人公が疾走する気持ち良さよ!

画面奥に累々と兵士が連なる中での疾走。
良い。

劇中、感情や表情が前面に出てこないのも客に媚びてなくて好き。
戦友が死んでも、泣き喚く場面はなく一心に使命を果たしていく。

ただ、展開はハリウッドの王道展開。
照明弾と燃える街が作る光と影のコントラストは美しいが、この映画に美しさは求めていない。

ゲームのような画面とカメラアングルはどことなく見覚えがあるし、破綻のない脚本も、なぜか主人公に当たらない弾丸も、戦場のリアリティが売りなだけあって気になってしまう。

BGMですら、余計に感じた。
BGMで今後の展開が読めてしまう。

長回しでの第一次世界大戦体験をするにはまだ「娯楽」に寄り過ぎてる。

もっと観客を突き放してくれ。
リアルな戦場のなか、BGMが一切使われない主人公が誰かもわからないうえで戦場の中を必死でついていきたい。

名匠 今敏監督も「リアル」ということについてこう語る。
「写実的なことと、リアルなものは違う。写実的に書いたからといって、リアルになるとは限らない。
リアルは描かれるものではなく、鑑賞者によって発見されるものだ」

この場合、写実を描き過ぎて、逆に不自然であった。
だからまだこの映画は「娯楽」の域を出ない。
この程度ならカット切るべし。
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