木蘭

オフィサー・アンド・スパイの木蘭のレビュー・感想・評価

4.7
 ベルエポックのフランスを揺るがしたドレフェス事件を描いた重厚な社会派歴史ドラマ。
 余り日本では注目されいない様だが、物凄く良質な作品で、売られているパンフレットもデザインが素晴らしい。

 巨額の資金を投入している訳では無いだろうし、群衆のシーンなどでは限られたスケールの中で表現しているものの、欧州映画らしい堂々たる作品。衣装やセットなど濃密な画面作りには魅了されるし、オープニングのドレフェス大尉の除籍式からして引き込まれる。

 前半はミステリー、後半はポリティカル・サスペンスという構造。そのどれもが良質で、品が良い。
 過度の盛り上げは一切無く、俳優たちも比較的抑え気味の演技で淡々と出来事を描いていく2時間強なのだが、全く緩むこと無く緊張感が続き、クライマックスに向かって(歴史の結末を知っているのに)手に汗握ってしまう。

 沢山の人物が出てくるし、当時の風俗よろしく皆が皆、立派な髭をたくわえているので(しかも制服は勿論、服装も似ている)誰が誰だか分からなく成ってくる問題はあるが、重要な役は面白顔(?)の名優たちをそろえているので大丈夫。

 同監督の『ナインスゲート』もそうだったが、時代がかった描写を差し挟むので・・・ホコリの積もった書架から取り出した古い書籍を開いて読んでいる・・・そんな気持ちにさせてくれる。
 古典を開いて見せると言う事は、勿論それは現代的問題を提示している事に他ならないわけだが。
木蘭

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