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異端の鳥のバロウズのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.3
第二次大戦中、親族と家を失ったユダヤ人の少年を待ち受けていたのはあまりにも過酷な運命だった。

戦火の中でもがきながらも懸命に生きようとする少年の地獄巡り。しかも彼を取り巻く大人たちはろくでもない奴らばかりで(中にはまともな人もいるんだけど…)ひたすら少年を虐げる。
原題「The Painted bird」の通り、ほかと違うってだけで差別、迫害され最悪殺されたりする。戦中の東欧を舞台に描く不条理劇。
原作小説はそのインモラルな内容が問題になりウクライナで発禁、著者のイェジーコジンスキーは服毒自殺をした曰く付きの作品。


全編モノクロをいいことにかなりエゲツないことやってます。冒頭の焼殺シーンから度肝を抜かれた。
拷問、銃殺は当たり前、眼球抉り出し、女性器に一升瓶突っ込んだり。ヒェー。

170分、幼い子供が酷い虐めに遭うのを延々と見せられるのは精神的にキツい…
だけどそんな劣悪環境に適応していく少年の姿は逞しくもあり恐ろしくもある。人の死体を見て笑みを浮かべたりとかね。

わざとやってるのか、ちょいちょい笑わせてくるのもタチが悪いと思った。ババアの家にヤギの首投げ込んだり性的虐待オッサンをネズミ穴に落として殺したり。まあスカッとしたけど。

グロは案外控えめで直接的描写はほとんど無いので苦手な人でもギリセーフかも。ただしセックスはガンガンやってる。

いろいろな意味で非常に見応えのある作品でした。後味は良くないし過度な暴力や性描写など見る人を選ぶ作品ですが、是非多くの人に見てもらいたい。
ハネケ、トリアー、「サウルの息子」「炎628」なんかが好きな人にオススメ。


ただ少し気になった点、ポスターにもある首まで埋められた少年とカラスのシーンですが、いくらカラスでも生きた人間を啄むなんてあり得ないんじゃないかと。
カラスってああ見えて臆病で、繁殖期以外で人間を攻撃することはまずないです。
蛇とかもやたら出てきたし、何かの象徴なのかな?
と、まあどうでもいいお話しでした。
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