けーはち

一人っ子の国のけーはちのレビュー・感想・評価

一人っ子の国(2019年製作の映画)
4.0
計画生育政策、所謂「一人っ子政策」時代に生まれた世代の女性監督が撮るドキュメンタリー。近現代の中国を当事者が描く稀有な一本。

厳格な統制は中国人の生活水準向上の一助になったが、その裏に我が子を亡き者にし涙を飲んだ親が大勢。それは「人口戦争」と呼ばれ、血を流すのは当たり前とさえ言われてきた。また盛んに人身売買も行われたが、殺すよりはマシ……というよりゴロゴロ道端に捨ててある赤ん坊を拾って余裕のある家の養子にするのは全然人道的とすら思える当時の状況を売買ブローカー関係者や監督の親族世代が生々しく語る。

働き手=男が生まれるまでは一人っ子政策当時でも例外的に認められた複数子の姉に当たる監督。ロクな教育も受けられずに単身アメリカに渡り、今やアメリカ人として身内やかつての同胞の悲痛な過去をインタビューするその心境はいかばかりのものか想像を絶する。

ラストシーンは「一人っ子政策」を止めて新たに「二人っ子政策」に転換し始めた(今や少子高齢化が問題化し始めたので)政府のプロパガンダの音頭で、かつての当事者の目にはどれほど虚しく響く事だろうか。