けーすけ

ホモ・サピエンスの涙のけーすけのレビュー・感想・評価

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
3.3
2020/11/11(水) 渋谷・映画美学校試写室でのFilmarks試写会にて。Filmarks様いつもありがとうございます!4列目の真ん中あたりで鑑賞。

2019年の『第76回ヴェネチア国際映画祭』銀獅子賞を受賞したという本作。ロイ・アンダーソン監督の作品は全くの未見で、「なんだか映像が綺麗そう」という印象のみで鑑賞してきました。




観終わっての率直な感想は「映画というか、絵画のようだった…」でした。

雁が遠くへ飛んでいくのを見つめる男女のシーンから始まり、妻のために料理を作ろうと考えている男性の独り言(我々に話しかけているかのよう)、神への信仰心を失ってしまった牧師、十字架を担いで鞭や棒で叩かれる男性、カフェから流れてくる音楽にあわせて踊る女の子3人組、、、繋がりがあるようで無い映像が続々&淡々とオムニバス形式で。なんとも不思議な感覚でした。


全33シーンそれぞれをワンシーンワンカットで切り取ったという撮影手法。とある行軍のシーンを除いては全てスタジオでのセット撮影だとか。外の風景や空などはグリーンバックでの合成かマットペインティングなのかなー。
そして、とても精緻に映し出される背景やセットが美しいものの、どことなく霞がかったような色彩と構図の虚構感が「絵画のよう」と言ったゆえん。

もちろん本作ではシャガールの“街の上で”やKukryniksyの“The End”という油彩画など色々な絵画をモチーフにしているようで、観終わって調べてみて「なるほど~」と。そのあたりに詳しいとより楽しめると思います。

また、時折挟み込まれる女性の声でのナレーションが詩的にも感じたり、本作のスパイスになっていました。


劇中で出てきたスパークリングワインが美味しそうで、帰り道にコンビニで思わず買ってしまい、飲みながら余韻に浸るという影響体験ができたのも◎。



映画にストーリ性やワクワクするような体験や、分かりやすさを求める人には理解しづらい作りかなあ、と。普段から美術館に行ったりして芸術への造詣が深い人には刺さる内容だと感じた次第です。

さながら76分間の美術館体験のような映画でした。


[2020-169]
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