ヨミ

ホモ・サピエンスの涙のヨミのネタバレレビュー・内容・結末

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『ホモ・サピエンスの涙』

哀しみに満ちた町の、悲しむ人たちの話。

人々の寂しい悲しさをショットが区切っていく。かつて傷つけた旧友に無視される男、戦争で息子を失った夫婦、生きる希望を見つけられない老人、滅んだ都市の上を浮遊する恋人たち。ほとんどの人たちの視線が交わされることはない。彼/女たちはひっそりと閉じた街に生きていて、すすり泣くように生きている。

常に静止画のような遅々とした時間と、哀愁に満ちた色合いに画面が埋め尽くされていて、今すぐこの街に住みたくなった。

オムニバスの中で唯一連続性を与えられたのは信仰を失った牧師だった。彼は医者にすがる。医者は淡々と「来週この時間に」と告げ、時間外に来る牧師を「もう終わった。バスの時間がある」と規則的に追い返す。神が権力を持っていた時代から医者に権力が遷移していく、近代への転換が映し出されていて感動してしまった。

大きな物語が失われていくまさにそのさなかで、ゆったりと生活が続いていくのだなと思った。

あと、驚いたのが是枝が撮った米津のカナリヤが(ダイジェストだけど)予告で流れたこと。フィルムグレインたっぷりだし映画館で観れたらいいとは思ってたけど流れるとは思わなかった。よかった。
ヨミ

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