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完全な候補者のdiesixxのレビュー・感想・評価

完全な候補者(2019年製作の映画)
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アル=マンスールの素晴らしいデビュー作『少女は自転車に乗って』を見ると、主人公が車を運転しているファーストカットですでに胸が熱くなる。
外は泥まみれで、中はビニールシートをかけたままの車は何を表現しているのだろう。高速道路を飛ばす中盤や、自ら声を上げて切り開いた「道」を行くラストカットなど、全編を運転が縁取る。
キャスト、演出、脚本とも完成度高く、政治的に正しいが、図式やドグマに囚われすぎて、活劇的な飛躍が足りないのが少し残念。
全てに手続きに男性を介さなくてはならない気の遠くなるような社会の中で、地方議会に出るために奮闘する主人公。顔を全てケープで覆い隠した、異様な公約動画から、徐々に境界を踏み越えていく。ほろ苦い現実のあと、一番遠いと思われていた人間をたしかに動かしていたというありきたりだが、グッとくるオチ。それに対する主人公のリアクションも良かった。
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