空海花

HOKUSAIの空海花のレビュー・感想・評価

HOKUSAI(2020年製作の映画)
2.8
北斎の映画とあらば観に行かない訳にはいかないので。。

若年~壮年期を柳楽優弥が演じ
老年期を田中泯が演じるという2つの骨組みと4つの章で構成される。

まず言いたくなるのがオリジナルストーリーだということ。
脚色を加えるのに異論はないが、
どうしてこうなった?は問うてみたい。

厳しい体制に反骨精神で立ち向かった芸術家、北斎を描きたかったというコンセプト。
幸い、柳楽優弥と田中泯の演技の共鳴はそれなりに見応えはあった。
柳楽優弥の北斎はギラギラ漲る反抗心と求めてやまない若さ
田中泯の北斎はその精神を保ちつつ、100まで生き本当の絵描きになることを渇望した。
田中泯に移り、柳楽優弥の台詞のトーンと変わらない響きを感じ、ハッとさせられた。
共に筆をのせるタッチも様になっている(ただそんなにはシーンないけれど…)
クライマックスでは更なるシンクロを魅せるので、ここはお楽しみにといったところか。
版画の摺り師の手元を映すのも良い。

しかし、他の人物描写にいたっては
歌麿は玉木宏の色気で押しきり
写楽は思いきり若造キャラ。
写楽は突如現れ去って行った謎の多い人物。そのイメージは完全に壊れていてもったいないな、とか
娘のお栄(葛飾応為)はもっと芸術家肌だったはずで、その感じを出した方が
現代の女性像の描き方にマッチしたのではないかとか、思ってみたり。
メイン以外はちょっと出て去っていく良くない演出。
深みや繋がりはほとんど感じられない。

前半は蔦屋重三郎(阿部寛)
後半は柳亭種彦(永山瑛太)
とのドラマがメインに据えられている。
「絵は世界を変えられる」
自身の絵のスタイルを見出すという前半は序として眼を瞑るとしても
後半に関してはインパクト狙いかなとまで邪推してしまう。
何だかもう北斎じゃなくても良かったのではないかという気持ちにさえなった。


以下もう少し責めるのと🙇
内容に触れます⚠️


吉原のシーンでは
趣のない照明と色気のなさにがっかりしたが、
外に出れば映像は少し良くなる。
柳楽優弥と竹林。
田中泯と藍は舞踊のような
心を掴むシーンだ。
2人の北斎の波と富士には魅入られる。
でも短い。感じ入ろうとしている途中で画面が切り替わること数回。
そしてキスシーンが長かった…
間が悪い。。

90歳まで生きた重厚さを2時間程度におさめるのは難しいとは思うものの
章を分けたことで更にあっさりとしたものに。
脚色にはせめてリスペクトを感じさせてほしい。
私も言いたい。そこに愛はあるんか?と。
お栄をやっている場合ではないよ。

部分部分では大画面で観てほしいかなというシーンもあるのだけれど
これでは線ではなく点でしかない。
でも何か作り手の変な感覚もところどころに感じてしまうし。

北斎でなかったら、ここまで言わないが
劇中に現れる絵がなければ、持たないか。
ワールドワイドな芸術作品になり得る題材を、こんなドラマに薄めてしまったことは、本当に残念でならない。


2021レビュー#111
2021鑑賞No.209/劇場鑑賞#19
空海花

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