たま

ハニーボーイのたまのレビュー・感想・評価

ハニーボーイ(2019年製作の映画)
4.5
シャイア・ラブーフ脚本の自伝的映画。自身の父親をシァイアが演じる。とても良い映画でした。

エンタメ性は一切なく、ドキュメンタリー的な要素も感じた。ドキュメンタリーを撮っていた監督だからかな。
下手に感情を煽ったりせず、ちょっとした仕草や情景から感じる、心の内側がじわじわと心に迫る。

多感な12才のオーティスを繊細に演じるノア・ジュプ。
言葉は少なく、瞳で語る姿が切なすぎる。父親への愛と戸惑いと憎しみが入り交じる。
見た目もすっごくハニー・ボーイ。

一方、完全に人格が崩壊してしまった、成人してからのオーティスを演じたルーカス・ヘッジズ。
こんな危うい少年時代を過ごしたからこそ、繊細な演技ができるのかと思うと皮肉だ。
父に認められ愛されたかったオーティス。
親父が唯一くれた価値あるものは“痛み”だという。
その“痛み”によって人間としても役者としても育っていったのか··

毒親の気分屋で横暴な父ジェームズをエキセントリックに演じるシァイア。
演じて何を感じたのだろうか?
辛くはなかったのか?
これって自身のセラピーなんだろうか?

そんな父親でも、息子に対する愛情は充分に感じるから、またまた皮肉だ。
オーティスが居なければ、経済的にもやっていけない。そんな惨めな自分自身に怒りを感じている。
ジェームズも自分の母親のアル中と帰還兵のとしてトラウマを抱えている。負の連鎖は止められない。

辛い映画なのに、何処か温かさも感じた。そこには愛があったからなのか。
黄金色の光が切なくも優しくオーティスを包む。

今だトラブルの絶えないシャイア・ラブーフ。いい役者だから乗り越えていって欲しい。
たま

たま