空きっ腹に酒

歌うつぐみがおりましたの空きっ腹に酒のレビュー・感想・評価

歌うつぐみがおりました(1970年製作の映画)
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いつも誰かを待たせて、誰かを待って、時間や約束や誘い、何かに追われてる。静かなのは落ち着かないし、騒がしいのはイライラしちゃう。何がしたいんだっけ?何をするんだっけ?結局何も出来てない気がするぞ?慌ただしくあっという間に一日は過ぎていき、迎える明日。手を付け始めたミシンに譜面、何をするにもいつも最後まで事は進まない。何もかもが中途半端なままだ。でもティンパニーだけは任せてくれ、演奏には間に合うように急いで向かうから。

イオセリアーニの映画は本当に忙しい。画面いっぱいに次々と出てくるひとたちと、生活する中で溢れ出す様々な音。なんて流動的な作品なんだろう、と驚かされた。男たちとギアがピアノを囲み歌い出すシーンがめちゃくちゃ好きだった。あとは飲みの席で知らないひとに歓迎されて乾杯!→やっぱり歌い出すところ、すごく好きな流れだった。いつだって音楽がそばにある映画はどうしたって好きになっちゃう。

ギアが慌ただしくしてるのは、なんだかんだと憎まれずにひとを寄せ付けちゃうその人柄故だよね。クビにすると騒ぐひとがいる中、楽団の仲間たち(彼らとギアのやり取りもとてもホッコリしていて好きだった)は彼を守っていたもの。

やろうとしてたことがやれないの、上の子が赤ちゃんだった時の慌ただしかった日々を思い出した。泣かれては作業を中断し、また泣かれては中断し、をひたすらに繰り返して、すべてが中途半端で、ひとつとして“最後まで”こなすことが出来なかった。それはわたしにとってストレスで、もしかしたらギアもおんなじようなこと感じていたのかな。なんて思ったりもした。


今日も時計の針は動き続ける。
空きっ腹に酒

空きっ腹に酒