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歌うつぐみがおりましたのmrhsのレビュー・感想・評価

歌うつぐみがおりました(1970年製作の映画)
4.8
『落葉』を経てイオセリアーニ節が完成形へ至った傑作。イオセリアーニ最高傑作の1本か。流麗なカメラワークはもちろんのこと、音楽を含めた音響がこんなに過激だったとは、初見の時は完全に見落としていた。

まるでゴダールか後期アレクセイ・ゲルマンかというようなノイズ(?)の洪水。ジャック・タチ的とたまに言われる人で、確かに主人公の造形は『ぼくの伯父さん』のようなのだが、ほのぼのしてるようで主人公が否応なく"ノイズ"に飲み込まれて行く様はタチでも『プレイタイム』的か。これ最高の褒め言葉です。

主人公の主体よりも状況が先行していく(主人公は何かをサボっている訳ではないのだ)ような作劇は社会主義のやんわりとした風刺なのでしょうか。

ジョージア時代最後の『田園詩』でもここまでではなかったと記憶するが…。というかこの人は本質的に田園の人ではなく、都市の人なのだろう(田園に憧れつつ、不可避的に都市を描かざるを得ない人?)。いずれにしてもこれは本当に凄い!何度でも観たい。
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