mimitakoyaki

娘は戦場で生まれたのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

娘は戦場で生まれた(2019年製作の映画)
4.3
圧倒的に強いドキュメンタリー。
戦場に生きるという事がどういうことなのかをそのまま映して、こんな世界があっていいのかと突きつけてきます。

ワアド監督が学生だった頃、アサド独裁政権に対する反政府デモに参加し、それを記録していました。
革命の高揚感に包まれたも束の間、すぐにシリア軍による軍事攻撃が始まり、ロシアがシリア軍に加担し、本格的な内戦に突入していく様が映されています。

ワアド監督は、友人だった医師と結婚し、女の子(サマ)を出産。
恐ろしい爆撃が日常となった中でも、愛する人と結婚し、命を授かった喜びや、家を持った時の幸せ感が、瓦礫だらけの灰色の世界でも希望となって輝いていました。

容赦ない空爆によって、たくさんの子どもたちや市民が残酷に殺されていき、そのたびに病院の床は何人もの血が混じり合って赤く染まり、遺された家族の泣き叫ぶ声が響き渡るのを見て、なぜこんな酷い事が起きてるのに、誰も止められないのか、悲しさと虚しさでいっぱいになりました。

爆撃された音を聞いてもスヤスヤ眠るサマちゃん。
空爆慣れして、近くが攻撃されても落ち着いているアレッポの人達。
地下にひとまず避難し、そこで談笑したり。
ここで生きる人達にはこれが日常なんだなと思うと胸が痛いし、いつ殺されてもおかしくない状況にありながらも、そこで生活し、デモをし、人を助け、この惨状を記録する、そんな人達がなんと尊いことか。

病院に担ぎ込まれてきた妊婦さんから素早く赤ちゃんを取り出し、泣かずにグッタリとしてる赤ちゃんを懸命に生かそうとする医師達の姿は涙なしには見れないし、そこで起きた奇跡には圧倒されます。
無惨に奪われるたくさんの命がある中で、過酷な戦場でも新たな命が生まれて育っていく。
それがそこに生きる人たちにとってどれだけ大きな希望なのか。

サマちゃんや子ども達に、何にも怯える事なくお外でたくさん遊ばせてあげたい。
どこにも逃げなくていいし、誰も命を脅かされない、そんな当たり前をあの子達にしてあげられないのが本当に悔しいです。
こんな恐怖に晒されて傷付けられた子ども達のメンタルにどんな影響があるのかも心配です。

今年でシリア内戦も10年目です。
今ではいろんな武装勢力が加担、台頭し、泥沼化してしまってますが、戦争を続けるには資金や武器が必要なので、世界が一致して資金や武器弾薬の援助をしないようにして欲しいです。

戦場のリアルを当事者が記録した凄まじいドキュメンタリーでした。
シリアに暮らす人達、シリアから逃れた難民の人達が1日でも早く安心して生きられる事を願わずにはいられません。

5
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