イライライジャ

乳母のイライライジャのレビュー・感想・評価

乳母(1999年製作の映画)
4.3
精神科医の夫、赤子に母乳を拒否され産後鬱の妻。そこに雇われた若き乳母。
母としての無力感と立場を奪われることの焦燥感。見事な画作りと心理劇。読み書きが出来ない乳母の言う「見えないものが書けない」にドキッとした。見えないものとは感情のこと。確かに感情を文章や言葉に現すことが出来るのは不思議だし、精神病棟で最もキチガイの女にその「感情」を朗読させるのが美しくて感動する。精神不安定な人がたくさん出てくる中で、嵐のなか館で走る家政婦のシークエンスや赤子への母性など無垢な画が写されるアンバランスさが作品の美しさに拍車をかけている。
ベロッキオのこういう曖昧さがかなり好き。