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呪いの館のhorahukiのレビュー・感想・評価

呪いの館(1966年製作の映画)
4.2
美少女幽霊(男子)が手毬を投げながら、村人を自殺に見せかけてぶち殺していく怪談系ホラー。

巨匠マリオバーヴァ監督の傑作ゴシックホラーです。かの有名なフェデリコフェリーニが『世にも怪奇な物語』(未見)内で本作を引用してるのは有名ですが、デヴィッドリンチやギレルモデルトロも自作内でオマージュを捧げてるらしく、バーヴァの影響力のすごさを思い知らされますね!

あらすじ…
舞台は1900年代初頭のトランシルヴァニアの村。その村に住む女性から「自分は殺されるかもしれない」という手紙を受け取った警察が到着したころには彼女は既に死んでいた。その後
、検死にやってきた医師の主人公が見たのは自殺としか思えない死体。解剖をしようとするも村人の反対にあう。村人が言うには、この村は呪われており死亡した女が仕えていた屋敷にその原因があるらしいが…。

まず冒頭が素晴らしい。
村人たちが棺桶を村の中に運び入れるところを主人公が目撃するシーン。白バックの中で黒い影が棺を運ぶ様を遠景で捉えるところは、この世のものとは思えない気味の悪さを感じさせるし、運び入れられる棺の後に続いて主人公が村の門をくぐるのは、足を踏み入れてはいけない異界へ死者とともに吸い込まれていくかのようなゾワゾワとした気持ちにさせられる。

医師という科学の申し子が、オカルトな迷信が支配する村に入るというのは『血ぬられた墓標』にも共通して見られる(ちょっと違うけど)設定だし、バーヴァを敬愛するティムバートン監督の『スリーピー・ホロウ』へと受け継がれているのだと思います。

そんで本作の魅力は何よりもバーヴァらしさ全開の映像美。本作と同じゴシックホラーである『血ぬられた墓標』はモノクロだったため、バーヴァの色彩感覚は味わえませんでしたが、本作では存分に楽しめます。廃墟のような退廃的な街並み。暗闇の中霧が立ち込める墓地。その霧に映し出される青や赤の照明が醸し出す幻想的な雰囲気。そしてゴシックムード溢れる屋敷の内装。こういった、霊が跋扈することに圧倒的説得力を持たせる舞台づくりはさすがのひとこと。

物語的には少女の幽霊が恨みの感情から村人を殺していくという単純なものなのですが、面白いのは少女の幽霊役を男の子に演じさせていること。綺麗な顔立ちをしているのですが、ただの幽霊で終わらせるのではなくビジュアル的な違和感を与えることを狙った配役のようです。

同じ空間を繋ぎ合わせるクライマックスの演出も見どころだし、螺旋階段を隔てて彼方(地下)と此方(夫人部屋)に分けられた空間構築(厳密ではないけど…)も良い。そして最終的にそれが逆転するいう発想も好きだし、その奥にあるより強大なものを匂わせるのは、単純な怪談に留まらない大きな恐怖を感じさせる。

テンポはゆったりとしてるし、物語的に目立ったところがあるわけではないのですが、バーヴァらしい怪奇と幻想に満ちた極上の世界観を味わうことのできる傑作です。でも私的には『血ぬられた墓標』の方が好き。でもこれもBlu-rayで見たかったですね〜海外版買おうかな。
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