ハル

バーナデット ママは行方不明のハルのレビュー・感想・評価

3.8
ケイト・ブランシェットが素晴らしい女優であることを再認識。
長回しでボイスチャットを入力しつつ、作業をしていく流麗なお芝居。
まるで、生の舞台を観劇しているような気分。

娘役の女優さんも自然体な演技がツボにはまっていて、とても上手だった。
屈託のない笑顔や天真爛漫な姿、バーナデット母さんとのナチュラルな会話など、魅力的な人物を大胆に演じている。

内容としては仕事に絡めた適応障害や鬱の問題が出てきたり、決してハッピーなだけではないストーリー。
実際に病を抱えた方と密に話す機会があった自分としては「あぁ、なるほどなぁ」と頷くシーンが多かった。

例えば、バーナデットがとりとめなくずっと一人で話し続けてしまうシーン。
「ちょっと席を外すね」と伝えた声が聞こえていなかった相手は、10分後に電話口へ戻っても変わらず一人で話し続けていた。
相手を気にせず、壁打ちのような一方通行なコミュニケーション。
会話のキャッチボールにならない感じ。
こうした“沈んだ違和感”を演技プランとして形にしているわけだから、彼女の表現力はやはり凄まじい。
仕事、結婚、子供。
歳を重ねれば…人生、本当に色々ある事がしみじみと伝わりゆく。

病気や家族との距離感を精緻に描き、その流れのままラストへ繋がる本作。
エンドロールと共に映される色彩豊かな絵も魅力の一つ。
鑑賞予定の方は、最後まで席を立たずお楽しみに。
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