コマミー

バーナデット ママは行方不明のコマミーのレビュー・感想・評価

3.4
【縛りに縛られて】



やっと本作が公開された…。

本作がアメリカで公開されたのは"4年前"…。
大好きな"リンクレーター"の新作という事で、いつ日本で観れるんだろうとワクワクしていたのだが、待っても待っても一向に公開されない。途中で世界中でコロナ禍となり、更に雲行きが怪しくなっていった。

そして4年が経った2023年…もう正直私は本作の事をすっかり諦めて忘れていたのだが、何と晴れて日本公開が決定したのだ。
ありがとうロングライドさん…😭


さて本作は、"マリア・センプル"と言う女性作家の同名原作小説の映画化である。本作は別に実話かどうかは書いてないのだが、本作で描かれている事は極めて"現実的"でもある。
"バーナデット"のように、女性は子供が産まれたら、たとえキャリア的にノリに乗っていたとしても、"一線を引いてしまう"のが社会的構造にある。バーナデットは"一級建築士"として人々から一時期カリスマ的な人気を放っていたが、突然やめ、今はIT関係に勤める夫"エルジー"と愛娘"ビー"と共に暮らしている。正直、申し分ない"大金持ち"だ。
そんなバーナデットは、この何も生み出せない生活に"限界を感じていた"。

極度な"不安症"にも罹っており、彼女の隣に住んでいる"ママ友"からはバーナデットの振る舞いを含め、よく思われていない。娘と約束した"南極旅行"も、娘や夫をがっかりさせない為にどうにか気を紛らわしていたが、船酔いや人混みへの不安が更に彼女にのしかかる。そしてやがて、彼女は騒ぎを起こすようになり、夫から治療を受けるようにせがまれる。

バーナデットや夫エルジーの事はさておき、マジでビーが"良い子"すぎた。
これはバーナデットが比較的良い母親だからかもしれないが、バーナデットが"とある理由"でママ友:"オードリー"に詰められている時、その矛先がビー自身に行った時もとんでもない"度胸"でオードリーを黙らしたのが気持ちよかった。勿論、その原因を作ったのはバーナデットでもありオードリーでもあるのだが…。劇中でも、バーナデットが行方不明になった時でも、モジモジしているエルジーをビーが"説得する"シーンもあり、劇中ではこのビーが凄い活躍する。それを演じた"エマ・ネルソン"も良かった。

だが、本作がアメリカにも日本にも"うまく浸透しない理由"も分かってしまった。
それは本作で登場するバーナデットやその家族、ママ友達など比較的"上流階級"にいる人物しか登場しない上に、"その人にしか分からない"精神的な悩みが登場するからだ。
不安定な経済的状況の中生きている日本人の感覚にもどうも"滲みにくい人物描写"だからだ。
確かに、彼女が置かれているものには多少「抑圧」されたものはあったかもしれない。だが、その下にいる人間はもっと辛い状況に立たされているゆえ、そんな人間が多い日本人にとっては「?」な部分も多かった。まぁ、バーナデットの気持ちは分かるのだが…。

4年待ったリチャード・リンクレーターの4年前の作品…魅力的で感動的な場面は確かにあるのだが、一方で掴みにくい部分も沢山あり、まずまずの作品であった。それでも、"ケイト・ブランシェット"の演技の幅に今回も驚かされ、待った甲斐も少しはあった作品であった。
コマミー

コマミー