寝木裕和

バーナデット ママは行方不明の寝木裕和のレビュー・感想・評価

-
『スクール・オブ・ロック』みたいな大衆向け娯楽作品から、『テープ』や『スキャナー・ダークリー』みたいな、なかなか実験的な作品まで、多岐に渡る作風で物語を紡ぐリチャード・リンクレイターの2019年作。なぜかやっと日本で公開。

創造する… ということでのみ、生きがいを感じていた主人公バーナデッドは、いくつかの事件・人生の岐路に直面する中で、その自分の生きがいを埋葬したように見えていた。

それらのことが起因して、極端な人間嫌いになり、他者との付き合いもうまくできなくっていったのだが、リンクレイター演出も作用してそこのところはそれほど重く感じないように描かれている。(元々、アーティスト気質なバーナデットはそもそも人間付き合いが得意でなかったのであろうことも想像できるけれど。)

それに、そんな徹底した人間嫌いなバーナデッドも、娘ビーや愛犬アイスクリームには溢れんばかりの愛情を抱いているのが分かる。

愛情に満ちた人ほど、他者に傷つけられた時、脆く壊れてしまうことは大いに頷ける。

ビーが、父エルビーに、家を出ていってしまったバーナデットのことを「私とママは大の親友なのよ!」と言い放つシーンがなにかグッときた。

終始コミカルに展開していくのだけれど、劇中でもビーとバーナデットが車の中で一緒に歌う『Time After Time 』がエンドロールと共に流れ、そこに南極基地を設営しているシーンがかぶさるのにはこれまたウルっとくるものが。
寝木裕和

寝木裕和