YYamada

誰がハマーショルドを殺したかのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【ドキュメンタリーのススメ】
 誰がハマーショルドを殺したか
 (2019)
◆ドキュメンタリーの種類
 被写体のありのままを撮影する
「観察型」
◆描かれるトピックス
 国連事務総長事故死に裏に隠された
 恐るべき陰謀

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・1961年9月、当時の国連事務総長ダグ・ハマーショルドはコンゴ動乱の停戦調停のため、チャーター機でコンゴへと向かう途中に墜落事故を起こし、ハマーショルドを含むすべての乗員が死亡。この事故は暗殺説もありながら、くわしい調査が行われないまま原因不明の事故として処理された。
・デンマーク人ジャーナリストで監督のマッツ・ブリュガーと調査員のヨーラン・ビョークダールは、謎の解明のためアフリカ、ヨーロッパ各地へ飛ぶ。当時の関係者たちは誰もが事故について語ろうとはしないなか、彼らはハマーショルド暗殺事件にとどまらない、秘密の組織による想像を絶する「ある絶滅計画」に遭遇する…。

〈見処〉
①暗殺部隊、ウィルス兵器——
 未解決事件の裏に潜む巨大な陰謀
・『誰がハマーショルドを殺したか』(原題:
Cold Case Hammarskjöld)は、2019年にデンマーク・ノルウェー・スウェーデン・ベルギー合作にて製作されたドキュメンタリー映画。
・監督は、デンマークで長年ジャーナリストやタレント、作家として多岐に渡り活躍し、『ザ·レッド·チャペル』『THE MOLEザ・モール』を手掛けた潜入ドキュメンタリーの第一人者、マッツ·ブリュガー。
・本作は「冷戦期最大の謎のひとつ」と言われる1961年9月の第2代国連事務総長ダグ·ハマーショルド墜落事故死に対して、7年の歳月を費やし、渦巻く陰謀とその真相に迫り、第35回サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門で監督賞を受賞した。
・また、本作取材との因果関係は不詳ながら、2017年に国連調査委員会の報告書にて、当該事故がハマーショルドの命を狙った暗殺事件であったことを仄めかす資料の存在が明らかになり、本作にて語られる内容の整合性を裏付けている。

②結び…本作の見処は?
ドキュメンタリー最大級の題材——
◎:「世界史が変わるほどの衝撃」 …。アフリカ大陸の植民地からの独立、アパルトヘイト政策、HIV/エイズの蔓延など、60年代から90年代の史実を繋ぐ展開は、政治サスペンス映画よりも深い陰謀の闇に覆われている。
◎: とくに「南アフリカ海事調査協会(South African Institute for Maritime Research)」、略称「SAIMR」という謎の団体の全容が明らかになるにつれ、ノンフィクションとは思えない展開を見せる。
○: 作中で調査を行うマッツ・ブリュガーとヨーラン・ビョークダールのコンビ間に漂う緩い空気感が、ことの重大さを中和してくれる。
▲: 世界史を覆すような重大な新事実を証言の話中のみでスルーするなど、置いておきぼりのリスクが高い作品。証言内容が散らかったままの会話が延々と続き、睡魔を催す。一定間隔で振り返りをするなど、演出面では課題を残す。
▲: ラストも結局は「陰謀」の範疇に留まっているのも残念。
YYamada

YYamada