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“樹木希林”を生きるのとうがらしのレビュー・感想・評価

“樹木希林”を生きる(2019年製作の映画)
2.8
樹木希林に密着するドキュメンタリーというのが名目だった。
が、その内実は、自分自身と厳しく向き合ってきた人間と、そうでない人間との差を如実に表すものであった。

樹木希林がディレクターをやんわり説教するシーンを見て、同じくディレクターを叱った宮崎駿監督の密着ドキュメンタリーを思い出す。
彼らは某国営ディレクターだから、努力を重ねて、立派な学歴を持って、ある程度の地位まで登ってきた人だと思うが…
あらかじめ答えが決まっている1+1=□の回答はできても、
全く答えが決まっていない◇+◇=1の回答が苦手な模様。
物事を鋭く観察して、自分の頭で道筋を見つける習慣を持っていないのが残念でならない。
樹木希林の裏側を知るはずが、図らずも、詰め込み教育と縦社会の弊害を知ることになった。

長期密着していながら、撮れ高が低い…。
樹木希林の最期の1年を映す貴重な機会なのにもったいない。
撮る、撮られる関係は、キャッチボールに例えられる。
相手のミットをめがけて、ただボールを投げるのではだめ。
思いやりを込めた球の速度やコントロール、その時の会話などで、キャッチボールの質も楽しさも変わる。
本作の監督は、それ以前の投球フォームから教わるようなものだった…。
病に侵された自分の体を行く末を心配するよりも、密着撮影を受けるドキュメンタリー作品の行く末を心配した樹木希林は、真のプロフェッショナルと感じた。
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