【希林の有能、監督の無能】
女優・樹木希林の最期の頃を映し出したドキュメンタリー。
彼女がいくつもの映画に出演したり、途中で不治の病にかかっていることを告白したり、彼女のファンには一見に値する映画になっています。
特に是枝監督の『万引き家族』に出演する際の監督との出演者打ち合わせのシーンは必見。貴重な記録と言えるでしょう。
けれども、希林さんの有能さが浮かび上がってくるドキュメンタリーである反面、監督の無能ぶりをまた否応なく感じさせられる映画でもあるのです。
監督は実際、希林さんにカメラを向ける以外のことは何もしていない。
いわゆる「黒子に徹する」というのではない。実際、監督にあまりに芸がないので、途中で希林さんも呆れ果てています。
素材(希林さん)がいいから何とか恰好がつきましたが、じゃなきゃ、監督の無能ぶりを後世に残す記録映画となったことでしょう。
いや、出来上がったこの映画も、そういう作品となっているように思いました。