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“樹木希林”を生きるのcalinkolincaのレビュー・感想・評価

“樹木希林”を生きる(2019年製作の映画)
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今日は「"樹木希林"を生きる」を。

「ドラマでご一緒したときにこのひとのことをもっと知りたいと思った」NHKのディレクターが俳優・樹木希林の最期のときを切り取ったドキュメンタリー。

撮影現場で資料写真とは違う髪型にしようとした若いヘアメイクさんに手厳しく指導したあと「どうしますか?」と聞いてきた彼女を「あなたのイメージでやって私にはないから」とピシャリと一喝したり、あの是枝裕和監督にも設定にリアリティがない、と詰め寄ったり、あぁ、仕事には厳しいひとなんだな、と思わせておいて、萎縮するヘアメイクさんに「大丈夫よ、あなたに責任取らせたりしないから。」とやさしくひとこと付け加えたり、是枝監督のシナリオにも納得がいけば、ヌードになるより恥ずかしいという入れ歯を外しての熱演を見せたり、厳しいだけではない彼女の温かいところが伝わってきたのがとても良かった。

最初は和やかに撮影を進めていたディレクターと希林さんだったが、そこは仕事に厳しい樹木希林。あなたは何が撮りたいのか、と彼に問い、ディレクターは次第に樹木希林というあまりに大きな存在に追い詰められ始める。
そんな彼に、少しの沈黙を取ったあと、彼女は自身の全身にがんが転移したPET写真を差し出す。
「自分の家庭もうまくできなかったり、作品を撮るときにメソメソしてるんじゃ駄目よ。」
そういいながら、彼と自分の作品に樹木希林はクライマックスとして自分の人生の最期を差し出したのだ。私はそこに彼女の底しれぬ優しさを感じ、少し泣いた。

ディレクターに「自由にやんなさい」ということばを遺し旅立った希林さん。彼女の生き方に少しでもシンパシーを感じる方にはぜひ一度観て頂きたい、完全ではないけど、不思議とこころに残る作品だった。
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