悪魔の毒々クチビル

マトリックス レザレクションズの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

3.5
「ミスタァアンダーソオオオオオオオオオオンヌ!!!!!」

ネオとトリニティをまぁまぁ長い時間掛けて再び戦士として目覚めさせるお話。

ここ最近、大作シリーズものが時を経て続編やリブートが製作されることは最早珍しくもなんともありませんが、その度に「わざわざ作る必要があったのか」とか「名シリーズに泥を塗った」みたいなネガティブな批評が一定数出てくるのも毎度の事。
実際皆さんも良いと思ったこともあれば、クソみてぇだなと思った残念な思い出もあることでしょう。
個人的にこの新「マトリックス」は、そうした続編映画でも特に好き嫌いが極端な分かれ方をしている印象でした。
俺自身、1は大好きなんだけど他の2作はそこまででもないので決してシリーズ全体に思い入れがある訳ではないし、一応シリーズ復習しようかなと思っていながら全然観ないままだったのでまぁ良いやとそのまま今作を観ちゃいました。

あぁ、うん、うん。ほぉ~。
どうせなら俺も好き嫌いハッキリ分かるようなスコアにしようかと思っていましたが、これはな~、確かに両極端な意見は出るよね。

個人的にこのシリーズは元々神話や哲学等細かいメッセージ性が散りばめられた作品ではありますが、同時にお馴染みバレットタイムなんかを駆使した鮮烈なアクションが魅力だとも思っていまして。
1はリアルタイムで観たんですが、当時の白ブリーフ履いてニッコニコで通学路を闊歩していてちびっこの俺に作品に秘められたメッセージなんか分かる訳ないものの、あのアクションシーンのお陰で「何かめっちゃ格好良い映画」っていう印象になったくらいですから。
じゃあ今作のアクションはと言うと、悪くはないんだけどあの頃のようなスタイリッシュさは大分薄れてしまいました。
特にキアヌ・リーブスは歳もあってか、流石に当時のキレキレカンフーを期待するのはちょっと無理がありましたね。
「ジョン・ウィック」ではアグレッシブな動きよりも多少大振りかつ省エネでも映えるアクションが多いのと、物語の展開的にジョンがめっちゃ疲れている場面が多々あるお陰で普通に好きなんだけど「マトリックス」みたいなスタイリッシュさ命なシリーズはやっぱしんどかったか。

キャリー=アン・モスも久々のアクション映画カムバックは嬉しかったけど、見せ場は終盤のみで少な目。
戦っている絵面は相変わらず格好良かったのでもう少し格闘シーンがあったらなぁと。
どうせなら"Dodge this."して欲しかったです。
あとネオもトリニティも最後の最後まで全然グラサン掛けてくれなかったのが地味に残念でした。

一部重要キャラのキャスト変更もしょうがないとは言え歯痒い所。
スミスやモーフィアスとの場面を始め、フラッシュバック的に過去作のシーンが使われる箇所が結構あってそういう意図は無いんだろうけど「オリキャラだったらなぁ」と思わず感じてしまう事もありました。

今作ではこれまでの神話的、哲学的メッセージに加えて製作に至るまでのワーナーとのゴタゴタも半ばメタ的な描き方で表現されていて、これが地味に多くてそんなに嵌まらなかったんですが、色々言いたい事があったのは分かりました。
あと途中から性転換したウォシャウスキー姉妹ならではの、ちょっとしたフェミ要素もあります。まぁ昨今の作品と比べると特に気になるものでもありませんでしたが、そのせいでネオが全然飛べない状態だったのはイマイチだったかな。
そのネオ、もといキアヌ・リーブスのルックスも撮影時期が被り気味だったとは言えまんまジョン・ウィックだったのは違和感凄かったです。

ただまぁ、結局ネオが力を取り戻した瞬間とかはワクワクはしましたし、ネオとトリニティが真の意味で再会した所なんかは感慨深かったりと楽しめた所もしっかりあったのは間違いないです。
スウォームによって走るゾンビ映画っぽくなったかと思えば、更に人間がアホみたいに落ちてくる人間爆弾なくだりも嫌いじゃない。
ピンチにまさかのスミスが一時的に助けに来てくれる展開も、俺は結構好きでした。

駄作ではないけど蛇足な部分はかなりあったので、もっとスマートな展開作りが出来てネオとトリニティの活躍が描けていればまだファンの評価も平均値は高くなっていたんじゃないかとは思います。
エンドロール後のアレはマジで要らなかったけど。