かわさき

ルディ・レイ・ムーアのかわさきのレビュー・感想・評価

ルディ・レイ・ムーア(2019年製作の映画)
4.0

多くの場合“たれらば”は無意味だが、そう考えてしまうのは人間の性である。

ルディが今の世に生きていればどうなっているだろうか…? 彼が生きた70年代においては、映画や音楽を筆頭とした芸術文化は明確に白人のものだった。今でもアフリカ系のアーティストが人種間の不平等を糾弾してグラミー/アカデミー賞をボイコットするぐらいだから、当時の様子は推して知るべし。今作でも映画のノウハウがある者、あるいは機材を所有する者の大半は白人だ。コメディアンとして年季の入ったルディよりも、UCLAの学生(白人)のほうが「映画」を知っている。

BLMムーブメントが存在しないどころか、スパイク・リーですら何者でもなかった時代の話だ。ルディは“ラップの父”と今でも崇められているが、ブラックアメリカンのカルチャー全体を牽引したレジェンドである。

彼が今の時代にメガホンをとったらまったく別の映画になっただろうし、あるいは“映画を撮る”という表現方法が選択肢に入らないかもしれないけれど、やはり当時と同じようにブラックアメリカンを勇気付けてくれる存在にはなっていたと思う。
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