らんらん

マザーレス・ブルックリンのらんらんのレビュー・感想・評価

マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)
4.6
エドワード・ノートン、2019年。

エドワード・ノートンの監督2作目。これは中々面白かった。
ジョナサン・レセムの同名小説(1999年)を原作とするスリラー。

「巨人の力を持つのは素晴らしいが、その力を巨人のように使うのは暴虐だ」(シェイクスピア)

ノートンは監督・脚本・製作・主演という肝入りで、権力と欲望にとらわれた輩にブーイングを飛ばす。

演じるのは、トゥレット症候群というチックの一種を持ち、同時に記憶力が抜群なライオネル。ノートンはこういう役が本当に上手い。眠たげかつ悲しげな表情も、一寸間を置くコミュニケーションにぴたりとはまっている。

所属する探偵事務所のボスであり恩人のフランク(ブルース・ウィリス)が事件に巻き込まれる。その真相を追って行く探偵もの。

原作の時代設定は1999年だが、こちらは1957年だ。
登場人物のハードボイルド感を活かすために改変したとのこと。またノートンは、50年代の社会問題はそのまま現代のニューヨークを形作っていると言う。

本作では、血肉を持った事物が「権力」によって抽象化される様を、ありとあらゆる社会問題として描き出している。
しかしそれらはあくまで作品の背景であり、主軸は個人的な感情にある。距離感を保つ仕掛けとして主人公の障害があり、心象風景がある。エンタメに落とし込んだ脚本は素晴らしかった。
他にもブルース・ウィリス、ウィレム・デフォーやアレック・ボールドウィンなどの出演者、音楽や衣装、再現された建築物も見応えあり。

難を言えば長尺(144分)なこと、そして渋すぎることかしら。
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