映画スニーカー図鑑

レディ・オア・ノットの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

レディ・オア・ノット(2019年製作の映画)
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Converse - Chuck '70 Hi Sunflower - Baskets - Jaune (主人公:グレースが着用)

日本では配信スルーになってしまったものの、『レディ・オア・ノット』は最高のサバイバル・ムービーであり、スニーカー映画だ。
ボードゲームで財を成した名家の元に嫁いだ主人公:グレースは結婚式前夜、家族の伝統である悪魔の人狩りかくれんぼに巻き込まれる。ハイ・コンセプトなプロットを、精巧に練られたアイディアの数々、大量の血糊、マヌケな金持ちたちへ容赦無く向けられたEat The Rich 精神、そして何より主演:サマラ・ウィーヴィングの圧倒的な魅力をもって丁寧にまとめ上げ、最高にBad-Assなエンディングへと走り抜けた爽快作。主人公は劇中、時に逃げ足を確保するため、時に止血するため、時に正当防衛用の凶器にするために、白いウェディング・ドレスを少しずつ、少しずつ引きちぎっていく。全ては己の生存という、最もシンプルで原初的な渇望を満たすためであり、ズタボロになり、声にならないような絶叫を吐きながらも、図太く生き延びようともがき続ける花嫁の姿は、清々しいことこの上ない。
スニーカー映画として本作が特異なのは、主人公が着用するチャック・テイラーが新品ではなく、ボロボロに履き潰され汚れまくっている点だ(ダイハードやキャリーを参照元にしているなら必然だが...)。金持ち一家の新たな一員として受け入れてもらうために、必死に“俗っぽさ”を隠そうと努めていたグレイスが裏切りに遭い、命を懸けた反撃に出る際の足元を支えるのがチャックス、世界で最も“定番”で、“俗”なスニーカーなのはアツいし、筋が通っている。映画史の中でこれだけ存在感を放ち、ここまでボロボロにされ、返り血を浴びまくり、誇り高い戦士の傷を負ったスニーカーは、恐らく存在しないし、出てこないだろう。


衣装デザイン:Avery Plewes
登場・コラボ:登場のみ