ぴよまろ

街の上でのぴよまろのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
3.9
今泉力哉監督脚本作品。下北沢の街を舞台に、そこで暮らす青年と彼を取り巻く下北沢の人々との、日常や恋愛の物語。

青が主人公であるものの、彼の目を通した下北沢の街と、そこで暮らす人々が中心になる物語で、下北沢の独特な雰囲気(カフェのマスターとの会話でもあるように、生きている街であり文化の街。)を体験できる作品でした。クライマックスの場面が、ただの道端で行われるというあたり、本作を象徴しているようで最高に面白いです。

名前は知らない「知り合い」が行き交い、ときにはすれ違いながら、若者たちが夢を追ったり追わなかったり。夢を追う者の熱も、追わない緩さも、同時に許容され共存しているカオスな街が魅力的でした。彼らの日常も恋愛も、カオスな街で起きる日々の泡のように、一つ一つがとんでもなく素敵で愛おしく感じられました。また、ただ優しい街なだけではなく、どこまでも日常が続くようでいて、実は少しずつ変化していく、そんな予感もさせる展開は、今泉作品らしいバランス感覚があってより奥行きも感じてよかったです。

「街の上で」という、何気ないタイトルですが、実際これ以上のタイトルはないであろう、街が主役の作品でした。
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