プリオ

街の上でのプリオのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
5.0
邦画もまだ捨てたもんじゃない。新しい可能性を感じさせてくれる。「好き=いっしょにいて楽しい」ではないとか、恋愛について考えさせられる。


<よかった点>
○終始ゆるく、軽いノリの映画。それが妙に心地よく、ずっと見てられる。派手なシーンや主人公の感情の大きな起伏もない。そこまでの葛藤もない。それが、まさにリアルな現実を描いていて、自然体な映画に仕上がっている。これくらいのゆるいテイストで人生を歩んでいきたいものだ。

○コント要素が盛り込まれて、シュールな笑いが個人的にツボ過ぎた。声を出して笑うほどではないが、クスッと笑える感じ、ニヤニヤしちゃう感じだ。笑うから面白いパターンもあるが、この映画は面白いから自然に笑ってしまう。その辺のお笑い芸人のコントに余裕で凌駕するものだった。今泉監督は坂本裕二と同じく、人情コントが得意なのだと発見した。 

○主人公は、カメラの前だとガチガチに緊張してしまい、スカウトされたのに関わらず出演シーンをカットされてしまう始末。そんな「存在の否定」をされるような男を、主人公にするのがアイロニックが効いてて面白い。それは映画より、現実の方が面白いことが起きてるかもよ、起こせるかもと、思わせてくれる。
 
○全体的に女が強いが、どのキャラも立ち過ぎている。だが、そこに変な違和感はない。それは下北沢という街のマジックかもしれない。


<好きなシーン>
映画全体が連続したコント仕立てになっていて、全て違う微妙な空気感、シュールさ、ニッチな笑いがあるが、ここでは二つあげる。

①青とイハの定点での長回しは映画史に残る。あの二人の作り出した雰囲気、息遣い、間、目線、セリフのやり取り、全てが愛しいのだ。音楽もなく、二人きりなので、誤魔化しようがない。これぞ映画、これぞ演技というものを見せてくれる。 

②ラストの四人の修羅場は笑いっぱなしだ。マスターの気持ち悪さ、素直になれない二人、噛み合わない会話。
 

<余談>
「愛がなんだ」の岸井ゆきのが素晴らしく可愛かったのと同様に、今作でも女性がみんな最高に魅力的に映っている。今泉監督は女の子を素敵に撮るのが上手いんだろうな。
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