いのしん

街の上でのいのしんのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
3.1
下北沢に住む主人公・荒川青(若葉竜也)と、その彼女・雪(穂志もえか)、行きつけのバーのマスター(小竹原晋)、映画の出演依頼をしてきた学生達との間に起きたやりとりを淡々と描く。THE・日常という感じで、何の展開もない。ただ、青がイハ(中田青渚)の家で夜を越した翌日、ばったり元カノの雪と出会ったり、イハの恋バナで出てきた2番目の関取の彼氏が、実は青の行きつけのバーの常連から仕事を奪った役者なのではないかと想像できたりすることを考えると、世界は狭いんだなと感じさせられる。それがまさに終盤のシーン。イハとイハの家に泊まった青、バーで朝まで飲んでいたマスターと雪、イハがしつこいと話していた3番目の彼氏。5人が住宅街の路地で鉢合わせする。自分の本音とは裏腹に、特定の相手がいることによって伝えたい事を伝えられないもどかしさ。関係ない第三者が話に割り込んでくるイライラ。それに対するツッコミが、第三者視点の視聴者から観ていると滑稽で面白い。雪が青を振って付き合った彼が間宮武(成田凌)で、その間宮と青は撮影現場で出会っていたという設定とか、知らないところで実は繋がっているのだというエモさを感じさせる。
大学生監督・高橋町子(萩原みのり)の言動が失礼すぎて好きになれない。撮影後に青に全カットすることを告げ、飲み会に誘う監督。なぜ青は付いていったのだろう。学生の中に一人、完全に浮いてしまうことは容易に想像できるくらい、演技が下手で撮影現場が変な空気になっていたのに。でも、そこでイハと出会い友達になれたのだから、そういう青の勇気ある言動は見習うべきなのだろう。
その後、2次会への移動前にイハと抜け出して、イハの家に行ってしまう。映画の撮影現場で初めて出会った大学生の女の子と飲み会の2次会前に抜け出してその女子大生の家に行っちゃうとか、もうそういう展開なのかと思ったら、恋バナトークが長回しで流れるだけだった。なるほど、そういう話ではないのか。
浮気した上に振るなんてあり得ないと雪を否定したり、昔一度喧嘩した時に雪を殴ったことがあるけど、それは雪から殴ってきたからだと弁明したりする青。分からなくもないが、世間一般的にこの考えはどうなのだろうか。自分は全然、青の擁護派であると思いつつ、浮気して振られるのは自分に魅力がなかっただけなのではないかと思うし、いかなる時も女性に手を出してはいけないのだと、青が間違っていると理解し納得することもできる。
まあとにかくイハが可愛い。あと、警察官の演技が下手な印象。