ヒノモト

シチリアを征服したクマ王国の物語のヒノモトのレビュー・感想・評価

4.8
伊藤沙莉さん目当てで日本語吹替版を観に行って来ました。
ほとんど予備知識なしでしたが、大変素晴らしかったです。

童話が原作ということで、私のような50代のおじさんが楽しめる作品なのかが心配だったのですが、大人が観ても十分に楽しめる、特に終盤はかなり考えさせられる良質な作品でした。

まずは、色彩配色が鮮やかで、原作の絵柄の雰囲気を残しつつも、CG表現の仕方が独特でデフォルメのタッチが絵画的とも言えるし、パースを使って奥行きのある絵的な立体感を多く取り入れたり、軍隊の動きがマスゲーム的に揃えていたりと、アメリカとは全く違うヨーロッパ的な影響の強い作風が大変印象的でした。

物語としては、原作で描かれた先の映画オリジナルの部分が、かなり響きが強かったです。

この先は、終盤のことを書かざるを得ないので、ネタバレします。

物語の後半、息子トニオを助け出したクマの王レオンスは、シチリアを統治することになり、クマと人間が一緒に暮らすことになるのですが、そこから共存していくこと、立場の違いを乗り越えた上での生き方、上に立つ者としてのジャッジとか、過去現在問わず人間がというか地球全体が抱えている問題の縮図が、ここに展開されていて、身につまされる感覚になりました。

ある意味、このあたりから結末までの道筋は、もうファミリー映画の域はとっくに超えていて、完全に社会派作品に様変わりしています。

とはいっても、決して硬いお話ではなく、映像表現として存分に楽しめるのですが、見た目以上に大人向けかなと思いました。
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