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小さな漂流船のrupertのネタバレレビュー・内容・結末

小さな漂流船(1946年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「オズの魔法使いに会いに行こう!」

映画の中盤、突然、この聴き馴染みのある曲が流れてくると、ジョン・ペインの妹役コニー・マーシャル(「センチメンタル・ジャーニー」で、ジョン・ペイン&モーリン・オハラ夫妻の養女になる少女を演じた子)とその愛犬が、ドロシーと愛犬トトになって、森でひとり暮らしをしている隠者に会いに行く。

この場面、すごく印象に残りました。20世紀フォックスの映画で、他社(MGM)作品の曲をこんなに堂々と使っちゃうんですね。
それもメロディだけじゃなく歌詞付きで流れるので、「オズの魔法使」がお好きな方ならテンション上がるだろうなと思いながら観ていました。
後で考えたら、最初から少女のお下げ髪や犬種を寄せて作っているんですよね(笑)。

パブリックドメイン版の戦争映画コレクションに収録されていたDVDで観ましたが、中身は、ジューン・ヘイヴァーの唄が入ったセミ・ミュージカル調で綴られる小さな冒険旅行ものといった感じの作品。

1943年という製作時からたった3年前のお話なのに、“Once Upon a Time(昔々)~”と字幕が出て、お伽噺風の雰囲気を盛り込んだ地方色豊かなのどかな作風で、少女の夢を壊さないように大人たちが協力してくれるのがほのぼのとした味になっています。

ヘイヴァーは、レストランで働く女性の役。
そのレストランに海軍に入隊したジョン・ペインが妹と一緒にやってきます。
奥手でヘイヴァーに愛の告白もできない優男というのがペインらしくていい。

映画の冒頭からペインが唄を歌ってくれるし、勿論ヘイヴァーもお店で唄を歌うので、2人の明るいデュエットなんかを期待していたら、ペインは戦場に出てすぐ消息不明になってしまい、その後終盤になるまで出番がなくなってしまいます。
主役の1人だと思っていたのに、ジョン・ペインってこういう扱いを受けることが多いですね…。

で、その後、行方が分からなくなった兄ペインを探しにヘイヴァーとコニーちゃんが旅に出ることになるんですが、風変わりな老人が1人で10年もかけて造り上げた小型帆船に乗って出発するというのも楽しくて、途中陸に乗り上げたら、車で船を牽引していったりするので、普通の道路を船が走るなんていうシュールな画ヅラも印象的。

車で船を引いていってくれる気さくなお兄ちゃんが若き日のジョン・アイアランドで、後年の強面イメージと全然違うのも面白いです(爽やか好青年なのに、歯フェチ!)。
出演時間がペインよりもはるかに長くて、アイアランドのほうが見せ場があるのも不思議な感じでした。

ワーナー時代には、バークレー振付の代表作「四十二番街」や「フットライト・パレード」などを手掛けて、音楽ものにも造詣があるロイド・ベーコン監督の異色作です。
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