櫻イミト

悪魔の命令の櫻イミトのレビュー・感想・評価

悪魔の命令(1941年製作の映画)
3.5
ポリス・カーロフ演ずるマッド・サイエンティストが死者との交信を試みるカルト・ホラー。監督は「十字砲火」(1947)のエドワード・ドミトリク。

アメリカ北東沿岸のニューイングランド。脳波研究の権威ブレア博士(ポリス・カーロフ)は最愛の妻を交通事故で亡くてしまう。悲しみにくれる博士は死者の脳波と交流する実験に取り憑かれ孤立していく。さらに霊媒師ウォルターズ夫人との出会いにより博士の執念はエスカレート。二人は研究を極めるため人知れぬ土地へ拠点を移す。博士の娘アンは連絡が途絶えた父に心配を募らせるが。。。

これまでに観た事が無いSFオカルト設定で、先が全く読めず最後まで楽しめた。

DVDジャケット写真の鉄仮面のような脳波測定装置が序盤から登場し、いかにも危うい外観と性能に引き込まれる。ポリス・カーロフは穏やかな狂気を巧く表現していて名演。気が付けばヤバいところまで行ってしまった博士と実験風景は、あたかもカルト教団の暴走を見るようだった。

実験には脳波エネルギーと電力が関係するようだがその仕組みは不明。死者たちに鉄仮面装置をかぶせ電力を上げていくと、振動と共に風が巻き起こりエネルギーが可視化していく。その怪しい実験風景には妙な迫力があり、Jホラーの監督たちが言うところの“見てはならないモノの気配”が伝わって来たようにも感じられた。

クライマックスの後、博士がどうなったのか明示しないのは少々残念。しかし明示しないことで本作の神秘性が保たれたと言えなくもない。

白黒ホラーで繰り広げられる怪しい実験は様々あるが、本作のは個人的に最高レベルに好みだった。あの映像は今後も繰り返して観るだろう。カルトホラーの称号にふさわしい怪作だった。
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