えむ

グリーン・ナイトのえむのレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
3.6
非常に雰囲気のあるダークファンタジー、重厚な男の成長物語RPG@中世騎士風といったところか。

王の甥でありながら王宮とは離れ自堕落な生活を送っていたガウェイン、唐突に今まで顧みられることがなかった王様に呼ばれ、魔術を使える王の妹である母が魔法の手紙で緑の騎士を呼び寄せて冒険譚がはじまるものだから、最初はその理由がわからなくて勘ぐりすぎた程。

(毎年行っていた宴をわざわざ欠席して魔術をかけた手紙で緑の騎士を送り込んだり、王様もお母さんも意味深な顔をするもんだから、この2人、実は仲が悪くて、剣を持っていない息子が無鉄砲に申し出を受ければ、王が剣を貸すことになり、その剣の持ち主に呪いがかかるのかとかね。)

ガウェインの旅はとてもシンボリックで、出てくるものや人は様々なアーキタイプ、その誘惑や試練を超えることで知恵や勇気や高潔さを得てホンモノの騎士に近づいていく。
通過儀礼的な物語ですね。

母から贈られた緑の腰布はエディプス的な「母親の守り」、つまり「自立をしていない」ことや依存心の象徴だろうし、ゴールに向かう途中ですぐ挫けたり諦めたり逃げたりするのは、私たち人間が等しく持つ弱点や欠点を表してるように見える。

つまり、この物語は、ナルニア国物語が宗教的な教えを孕むように、人の成長における教えをその冒険譚の中に孕むものなんだと思う。
書かれた時代ならそのまま「騎士道の教科書」的なやつ。
もっとも「誇り」より「誠実さ」を取りたい私はそもそもあんなん真っ平御免だけど。笑


あと、えっとこれ、ネタバレに掠るかもなんだけど。



終盤、目的地にたどり着いてからのアレは一瞬エッ?ってなりました。
他に方法って、高貴な騎士道諦めてツケ払いシステム発動する選択もあるってこと?

それじゃ「残念すぎ」...って騙されるとこだった。
でもこれを訳したトールキン先生も、最後長閑なホビット村で、はーこりゃこりゃ、みたいな感じだったしな〜とか思っちゃったよ。笑

ともかく、教示的で象徴的で、シンプルに見えて実に複雑、そんな物語でした。
えむ

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