ソノ

グリーン・ナイトのソノのレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
4.2
行きて帰りし物語…ではなく自分の首を差し出すための「行き」だけの物語。それだけの話なのにこの寓話性の中に鈍く光る主人公の魅力よ。いい加減だしなんかその場的(すぐ流される)だし騎士道精神のかけらも持ってない主人公だけど、なぜ嫌いになれず憎めないのか。むしろ好きにさえなる。誰しもが持つ心の弱さ、流されやすさ、意志の弱さを、この主人公が許されているとこによって自分のそれら弱さも認めてくれてるような感覚になるからだろうか。

だがよくよく見てみれば実は失礼を素直に詫びることができる人物だし、人を貶めようだとか傷つけようだとか、そういった害悪をまったく持っていないのがこのデヴ・パテルのガウェイン像でありそこが魅力の最大の焦点なんだと腑に落ちる。

遠い時代の遠い国の話だか、根本では非常に現代的であり(普遍的と言える)「良き人とは」を問う試練(旅路)だと感じた。完璧な良い人などいはしないだろうが、そうでありたい、あり続けたいと思い実際にそうやって生きていくのはとてもすごいことなのだ。

この主人公、他の俳優さんが演じてたら全然違うものになっていただろうな。デヴ・パテルだからこそ出せるこの魅力がこの映画の最大の魅力だ。
実際、デヴ・パテルの若い時とは違う(今も若いけど!)肉体の美しさ、顔(表情)の美しさ、瞳から醸し出される雰囲気、などなどデヴ・パテルの今の最大の魅力が溢れててそれだけで素晴らしい映画だと思った。適度な水分を含んだ柔らかそうな肌、黒く一本一本が太く長いまつ毛、黒く大きい瞳…。彼の今だからこその最大の魅力をデヴィッド・ロウリー監督がこうして作品に閉じ込めてくれたことこそが素晴らしい。

かといってじゃあ話が面白くないってわけではないのでそこは強調しておく。画面が暗すぎて若干寝かけたのは確かだけど(笑)寓話的なストーリーに絵本を読んでいるような感覚はとても面白かった。
あとキツネかわいかったね。バリコはなるほどバリコだった(これが私の初バリコ!)。


ソフト化の際はぜひ彩度が明るいバージョン(デヴ・パテルがよく見えるバージョン)も特典として入れて欲しい。
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