世界観に合わせるように品のあるデザインのパンフレットを開けば、玉座が王冠か…まばゆい金のページに言葉が踊る。
期待に胸を膨らませ鑑賞した今作、『ロード・オブ・ザ・リング』以来待ち望んできた高純度の幻想世界が遂に姿を現した。
A24が誇る独特な遠景の雰囲気が、中世が薫るファンタジーの世界にしっかりと寄り添い、まさに傑作然とした風格を漂わせる。
詩的で霧の中に佇む湖のごとき美しさに息をのみ、荘厳に鳴り響く神聖なる楽曲に心を預ける。
完成されたその世界に、意識が深く深く沈み込んでゆく---。
騎士は名誉を求め旅に出る。
余計なものは捨てて行け、
死への恐怖、生への渇望…。
ここから先は真の高潔さのみあればよい。
生きているのに死んでいる。
与えられた時間を無為に捨て去るその日々は、
木箱にしまい込んだ斧のように意味を持たない。
名誉とは何か。
その答えを己が心に見出した時、
本当の生が訪れる。
時は来た。
幻想曲《ファンタジア》が鳴り響く。
自分の物語は自分自身が紡ぐのだ。
私が私であるための、ゆきてかえりし物語。
