平田一

オン・ザ・ロックの平田一のレビュー・感想・評価

オン・ザ・ロック(2020年製作の映画)
4.2
旦那の疑惑に振り回される“宙ぶらりんの状態”を作家の奥さんがプレイボーイの父と調べる冒険譚(バケーション映画かも)。殆ど会話劇なのでヘタをしたら退屈なシーンの羅列になりそうなのを、ソフィア・コッポラ監督は全然無縁にさせるぐらい、素晴らしき「真夜中の父娘の冒険譚」でした。

実はこれが初めてのソフィア・コッポラ映画ですが、こんなに会話や積み重ねで魅せる作家さんだとは✨

例えばローラが旦那さんの職場のパーティーに招かれて、そこで味わう疎外感の映し方がスゴく良い。同じ職場で勤める以外にさして接点ない人間の奥さんを紹介されても相手は困ってしまううえ、奥さんも困ることしか出来ないイヤーな空気感。その感じをよくああまで再現できたもんですよw

ローラとママ友のやり取りもスゴく乾いていましたね。一方的に喋り続けるママ友に辟易しても、どうにかそれをやり過ごすしか出来ないローラの鬱屈を不快にならないギリギリラインに落としていたのも見事です。

しかも事態が思いがけないとこへ行くのが良かったです。ヤジ馬的な関心へ向かうことに舌を出し、もっとも興醒めする真相へ敢えて行かせる“痛み”にはかなりニヤリとさせられました。ラストも気分が良かったです。

口笛の上達がそのまま殻を破るというアクセントになっているローラのキャラも好きですね。思い切りが持てないためか意固地になりがちな日常を、皮肉にも旦那の浮気疑惑で破るキッカケに。痛がってて、ウンザリしてて、でもちょっとスッキリできたローラを演じるラシダ・ジョーンズさんも非常に良かったです!

幼児な動機も自覚の上で、自由に人生を生きている紙一重な魅力的なフェリックスも面白く、加えて演じるビル・マーレイもハマり役で最高です!真偽不明のウンチク話も含めて大変面白く、加えて犯した失敗を背負ってなおも軽やかにw カッコいいと言うよりも、トボけたインテリ(?)自由人でまたそれをマーレイが演じているから似合いすぎ(だからこそ新作の主演映画の不適切な言動を知ったときはちょっと残念でしたね)。

そういえばキングコングの梶原雄太さんも言ってたが、「結婚にはコスプレ」ってあるあるの一つなの?

まとめると現代社会の男女感を分析しつつ、個人的な事情の中で考察しているお話で、かなり面白かったです!

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平田一

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