QI

アフター・ヤンのQIのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.3
“愛のメモリー”

小津安二郎を敬愛するコゴナダ監督作品

ちなみに彼の名前は小津作品で多くの脚本を手掛けた野田高梧(コーゴ・ノダ)から拝借してるらしいですw

冒頭のダンスバトルシーンで一瞬心を許してしまいますが、内容は相当考察のしがいがある哲学的SF作品。

さらに物語の途中から謎解き要素も加わりその世界観にグイグイ引き込まれてしまいました。

ある日突然機能を停止してしまったベビーシッター用AIロボットヤン

なんとか機能を回復させようと禁じられている彼のメモリーを覗いてみると…

記録と記憶

その境界線は何か?
それがヤンと人間の境界線なのか?

アフター・ヤン=シンギュラリティ

自我に目覚め、人を愛することを知ったヤン
彼の機能停止は、その一線を超えないようにあらかじめプログラミングされたものなのか?

小津風味

一対一の会話でのカットバック
対象物を追いかけない固定カメラ

そんな表面的な小津っぽさはあるものの、本作では彼の作品のもっと本質的な部分にまで踏み込んでいます。

それは日常的な些細な出来事の積み重ねや繰り返しが人間のアイデンティティや他者への愛を形成するということ

そこには人種の違い、人間とAIロボットやクローンの違いなどはない

そんな考察のしがいのある余白とメタだらけのセリフの多さがとても楽しい

加えて美術(建物、部屋の意匠)や衣裳、音楽も素晴らしかったです。

さらに小津風味だけでなく、そこここに大好きな『ブレードランナー』っぽさを感じさせる、“記録”ではなく“記憶”に刻み、何度も反芻したくなる作品でした。

p.s.
父親役を演じたコリン・ファレル
『ザ・バットマン』のペンギンとの振り幅が凄すぎw
次回作『イニシェリン島の精霊』も楽しみ
QI

QI