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アフター・ヤンのeikotomizawaのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.7
登場人物たちの、それぞれのアイデンティティを保証し補強するラベルや文化やルーツが、一個人の孤独をふやかすにはあまりにもおぼつかないこと、静謐だけど途切れることのない渇望をミカちゃんの歌声や最後のグライドでまとめる90分弱の濃密さ、映画そのものの独立性とどこかでリリィシュシュの続編のような連なりを感じる点まで、なんとも静かで美しい映画だった。切れることのない、けれども細い細い糸で結ばれているみたい🧵原曲を選ばず、MITSKIがグライドを歌う必要があったのも納得。(「飛べない翼」じゃなくてよかった)

・ジェイクの本来の中国茶の淹れかたの不正確さを、文化テクノとして知らないはずがないヤンが、そんなことよりも彼に「美しさ」を伝えたまなざしは、プログラミングには存在しないものだったと思う。

・みんな所在がなくて、けど寄り添ったり悼むことはできて、慰めになる。それが例えば近未来を舞台にした今作で、多様さがなんの特別なものでなくなっても、囚われたり望んだりしてしまうんだろうな、その諦観と一縷の希望を見る作品でした。

・自然光に包まれた贅沢な景色はたくさんあったけど、なかでも異なる色の肌に当たる光の跳ね返りの差が美しくていっぱいいっぱいになってしまった…


・ミカが最後にヤンに伝えた中国語(字幕なし)は「嫌いって言ってごめん。哥哥(お兄ちゃん)のこと大好きだったよ。だから戻ってきてよ。」みたいなニュアンスでした。
 


けどこういうタイプの映画を見るときは週末の都心の映画館を選んじゃならん…ということもしみじみ実感🥹こういう静かさや音の細やかさまでじっくり楽しみたいシネフィル系を真剣に見るなら平日かレイトショーに限るわ。
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