まる

アフター・ヤンのまるのネタバレレビュー・内容・結末

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

美しくて優しくて切なかった……

100分もないのに、号泣した。号泣する最小限の内容だった。
最初メモリー見た時点で、全然この家族の歴史とか人物像とか知らないのに号泣した。
ヤンはもしかしたら愛という感情をプログラムされてないかもしれないけど、それに準ずる行為は上手にできてた。
例えば、家族の記憶をメモリに残す、人に話す、優しく丁寧に世話をする、言葉を尽くして励ます、など。

機能しなくなってからより一層、人間との違いがほとんどないように思った。
呼びかけにも反応できないし、もう一度機能することはできないけど、身体は生命維持できてる状態。
意識不明の身内をお見舞いするのと同じ。
人間との違いって、記憶を他者が見れるかどうかという点にあるのかな。
もしも人間が他人に記憶を見せれるとしたら、どうなるんだろう。
優しい気持ちにもなるし、辛い思いをするのかも。

ヤンが転じされるかどうかって、まさしく人間とのロボットの境界に立ってることだと思った。
もうヤンの意志では何も決めれないから家族に委ねることになるけど、その決定次第でヒトであり続けるか、モノになるのかがはっきり決まる。
ヤンの記憶に触れて、カイラの意志が変わるのもよくわかった。
それまでカイラは、修理できるのか、買い替えるのかっていうことを気にしてたけど、記憶に触れることで、ヤンは代えの効かないヒトであると認めて、家族として展示はしたくないと思ったんだろうな。

考えれば考えるほど、人間と大差ないな……。
展示も、臓器提供とも考えれるわけやし。

ヤンにとって1番大事な記憶は、エイダに関することだったんだなあ。
前前世ってことか。

人種もジェンダーも家族の在り方もフラットになった世界って、逆にアイデンティティが曖昧になるのかな。
アイデンティティって、他者と比べることで輪郭をもてたりするけど、それがなくなってぼやけるのかも。
だからヤンは、中国人のアイデンティティを探してたのかな。
最後にミカがヤンの部屋で話した中国語、なんて言ってたんやろう。

メモリの中が宇宙みたいになってたのがすごく美しかった。
たしかに、人の脳や記憶は宇宙だな。

自然と調和して共存してて美しかった。
でもこの自然は、人間の統治下におかれた自然だと思った。
でも、鳥の囀りと雨音も葉擦れの音も、紛れもなく美しかった。

満足度がすごい……。
映像の美しさも音の美しさも素晴らしかった……。
まる

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