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アフター・ヤンのaicokのネタバレレビュー・内容・結末

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

世界は美しくて、とんでもなく優しい。
結局、愛が満ちていたら広がる世界は美しい。

坂本龍一の音楽にのせ、美しい映像と美しい世界が広がっていく。

AIロボットが当たり前に家族として生活している世界。
ファンタジーと現実の狭間。
ベビーシッターロボットのヤンは、その家族に愛され、娘のミカにとってはかけがえのない兄だった。

そのヤンが故障してしまう。
ミカは憔悴し、父は直せるひとはいないかと奔走する。
しかし、直せる見込みはなかった。

あるラボに、ヤンの中のメモリーバンクを研究に使わせて欲しいと打診され、承諾した家族。
そのメモリーに映し出されたのは、ヤンの目に映った家族との記憶だった。
それは、全て愛に満ちていた。
愛を感じ、愛を注いでいたのだ。
そして、この家族のもとにやってくる前の記憶も再生される。
そこには、まるでヤンが恋をしているような行動、まなざしがあった。


AIには感情などないと誰もが思っていたが、愛に触れ、しっかり感情が学習されていたのかもしれないと思う家族。
わたしもそう思えてならなかった。

それがテクノであると突きつけられても、
それをそのまま受け止めるか、否かは観るひとに委ねられる。
喪失感を引きずらせないための報告かもしれない。
(ドラえもんがいなくなったことを野比家が忘れるようになっているように)
とにかく映像が美しく、優しい。

AI技術の進歩がめざましい今、
AIロボットが家族になるというのは、ありえない話ではない。
そうなったとき、AIロボットに心があるとしたら、すこし嬉しい。

坂本龍一の音楽とともに、UAやリリィシュシュなど日本の音楽があらたなアレンジで使用されているのも、絶妙にマッチしている。

すべてが美しくて、優しい気持ちで劇場を後にした。
出会えてよかった作品です。
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