Finn

アフター・ヤンのFinnのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.0
テクノと呼ばれる人型AIロボットが普及している近未来を舞台に、人間とは何か、家族とは何かを静かに問いかけるSF作品。

坂本龍一の美しいピアノの旋律と、映画『リリィ・シュシュのすべて』の主題歌をリメイクした「グライド」が印象的で、とても美しかったです。

本作で描かれる近未来は、ロボットやクローン、様々な人種や文化がごく自然に共存している世界。技術が発達してあらゆる垣根が取っ払われたからこそ、逆に「人間とは何か?ロボットと人間の違いは?家族の定義って?」っていう本質的な部分がテーマになっていて、すごく考えさせられた。

"無がなければ有も存在し得ない"

ロボットであるヤンの断片的な記憶は儚くて、でも美しくて暖かい。家族一人ひとりとヤンが交わした言葉は哲学的というか、少し難しいけど、すごく心に刺さった。

ストーリーの中心であるヤンは、中国からの養子に中国の文化を伝えるためのお世話ロボットなので、中国の文化や老子が頻繁に出てきます。
ただ、本作の監督は日本の小津安二郎監督を崇拝している韓国系アメリカ人で、音楽を担当しているのは日本人の坂本龍一とAska Matsumiyaなので、全体的にどことなく日本を感じるテイストだった気がする。

ヤン役の韓国系アメリカ人俳優のジャスティン・H・ミンは、先日観た『グレイテスト・ヒッツ』でも印象的だったけど、本作でも素晴らしかった。顔が映るシーンは少ないけど、鏡に映る姿とか写真を撮るシーンとかでの表情にグッと心掴まれる感じがした。

近未来が舞台なのになぜか近未来っぽくないというか、むしろ逆に荒廃した世界のような雰囲気があったり、ストーリーとか静かさの感じが、私が大好きなKazuo Ishiguroの世界観に似ているような気がしてすごく好きでした。

今まさにどんどんテクノロジーが発達して多様性が叫ばれる時代なので、すごく身近だし、今考えるべきテーマだなと思ったし、観て良かったです。
冒頭のファミリーダンスが最高!
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