リーアム兄さん

2人のローマ教皇のリーアム兄さんのネタバレレビュー・内容・結末

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【好きなセリフ】
ベルゴリオ「この世に偶然はない。すべては神の手の中だ。」

ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が死去し、新しい教皇を選出するコンクラーベが行われる。世界中から枢機卿がバチカン市国に召集され、ドイツのラッツィンガー枢機卿(アンソニー・ホプキンス)とアルゼンチンのホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(ジョナサン・プライス)もバチカンへと向かう。コンクラーベの結果予想としてはこの2人が最有力とされており、教会の伝統を重んじる保守派のラッツィンガーと今の教会制度は古くなっており一新する必要があると考える革新派のベルゴリオという保守と革新の対立となっていた。結果、枢機卿達は保守派のラッツィンガーを教皇として選出し、ラッツィンガーはベネディクト16世として即位する。しかし、その後教皇秘書による資金洗浄やカトリック司祭の幼女暴行などスキャンダルが起こり、ベネディクト16世およびカトリック全体の評価が低下してしまう。ベルゴリオは自分の信念と現在の教会に差があると感じ、枢機卿の座を辞すべくベネディクト16世に謁見するが、ベネディクトはその申し出を断る。ベネディクトは教会の信頼回復のため教皇を退任することを打ち上け、その後任にベルゴリオを推薦しようとしていた。本来先任が死去してから任命される教皇が同時期に2人存在してしまうことになる。保守と革新、考え方の異なる2人が教皇という立場を前に本音で思いを語り合う。

アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスという映画界を代表する大ベテランの2人が主演として共演した作品。
「ローマ教皇」という世界で最も権威的な立場の存在を演じるにはこの2人しかいない、と感じるような荘厳で上品だがどこかユーモアさもある、とても魅力的な演技を見ることができた。
イタリア語はもちろん、ドイツ語やスペイン語、英語などさまざまな言語でセリフが話されており、演技力もさることながら、2人の語学力にも感動した。

カトリック、キリスト教という日本人にとってはそこまで根深く根付いていない文化ではあるが、欧米の人々にとってキリスト教が本当に生活の一部分となっており、その生活を支えるいわば「神の代役」としての教皇の存在が、どれほど重要であるかがわかるし、そもそもカトリック教会の中でも枢機卿一人一人に違う考えがあり、それぞれが聖書の教えを解釈して信者に教えをといていることがわかり、勉強になる映画だった。