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2人のローマ教皇のおもとのレビュー・感想・評価

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
4.5
すごく良かった!!
カトリックの厳格な保守派であるベネディクト16世と世相に合わせた革新派であるグレゴリオ枢機卿、相容れない二人の歴史的な交流。実話ベースながら勿論その具体的な会話の多くは想像で補われている。にもかかわらず、2人の会話は自然でとてもリアル。
2人の主張や立ち位置、背景がストレスなく呑み込める構成が素晴らしい。
全編通して2人の会話劇で進むという構成がスッキリと潔く、飽きさせない。画面が白と緑などでパキッと構築されておりクリアーで美しい。

ベネディクト16世の悪名はキリスト教にそう興味のない日本にも轟くほど有名で、もはやカトリックでうんざりするほど聞いたことのある不祥事といえどその大いなる矛盾に暗澹とする。グレゴリオ枢機卿の言うように厳格すぎるかつての取り決めはもはや現実的じゃないよね(同性愛の禁止、神父の結婚禁止・信徒の離婚禁止、避妊禁止、堕胎禁止など)。
そもそもその急先鋒であるはずの保守派ローマ法王自ら破りまくってたってどういうことなの⁉︎それで保守派って何??
おそらくはっきりと罪を犯しているであろうベネディクト16世を美しく描きすぎているきらいはあれど、こういった一側面もあるのだと思えば許容範囲かな(勿論罰は受けてほしいし償って頂きたい)。

対するグレゴリオ枢機卿は初の南米出身(欧州以外の)教皇、諸々の禁止条項の緩和に寛容ということでようやくカトリックにも進歩の芽が芽吹いたなーという感じ。
グレゴリオ枢機卿の、一人で出来ることには限界がある。サッカーボールを皆で回すのです、という例え話が身近でストンと腑に落ちた。
最後のシーン、ベネディクト名誉教皇とフランシスコ法王、二人の教皇がそれぞれの出身国であるドイツとアルゼンチンのW杯の応援をしている後ろで蝋燭の煙がちゃんと上に上っている、という演出が軽やかで前途揚々としていて良かった。

あー良い映画を見たわ。
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