TaiRa

ビクター/ビクトリアのTaiRaのレビュー・感想・評価

ビクター/ビクトリア(1982年製作の映画)
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旦那が落ち目気味のカミさんの為に新しい代表作撮ってあげたのイイ話。

30年代のドイツ映画(『カルメン狂想曲』)をリメイクした作品。オリジナルも女が女装家に成りすます話だが、セクシャル・マイノリティの話を前面化していた訳ではないらしい。戦前ヨーロッパのショービズ界とゲイ男性を描くミュージカルと言うと『キャバレー』があるけど、多少意識はしてそう。もう既に『ピンク・パンサー』監督になってたエドワーズなのでテイストはコテコテのコメディだが。ジュリー・アンドリュースやロバート・プレストンの歌唱力とヘンリー・マンシーニの曲があればクオリティは約束されている。歌唱シーンはどれも普通に撮ってるけど良いもんは良い。クィア映画としてはIn the Closetを文字通り再現する形でクローゼットを使っているのが可笑しい。クローゼットの中でトランスフォーム=男装したアンドリュースが出て来る(カミングアウト)するくだりに高揚感がある。「隠れる」という演出が頻出するのもテーマに沿っていたりする。マチズモたっぷりなギャングが悪役ではなく、主人公の恋仲役として置かれているのも良い。男だか女だか分かんないまま主人公に恋する事で彼のマチズモが削られていく。ボディガードの彼とかも含め、基本全員に優しいのだが、嫌味な元カレや面倒臭い元カノに対しては厳しいのも可笑しい。
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