けーすけ

43年後のアイ・ラヴ・ユーのけーすけのネタバレレビュー・内容・結末

43年後のアイ・ラヴ・ユー(2019年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

元演劇評論家のクロードは妻に先立たれ、近所に住む友人のシェーンと気ままに暮らしていた。ある日、人気舞台女優のリリィがアルツハイマーとなった事を知る。リリィはクロードが若かりし頃に熱愛の仲となったかつての恋人だった。どうしても再び彼女に会いたくなったクロードは、自身もアルツハイマーのふりをしてリリィの過ごす老人ホーム施設に入居するという行動に出たのであった・・・






かつての最愛の女性にもう一度会いたい一心でアルツハイマーになったフリをするクロードと、渋々ながらそれを手伝う友人のシェーンの関係性が可愛らしい、“じいちゃん”と家族の映画でした。


クロードは若い時に一世一代な恋愛をして、それが結実しなかった事がずっと心につっかえていたのですよね。
人生は「もしも、あの時こうしていれば…」「こうなっていれば」といったやり直しができないものだけど、もう一度あの頃の気持ちを取り戻したいという思いが突っ走った、一応は純愛な映画でした。


43年ぶりに再会したかつての恋人リリィは、アルツハイマーで過去の記憶やクロードの事すら覚えていない状態。クロードは日々リリィへ思い出を語りかけ、彼女が好きだった花や音楽を贈り記憶を刺激するが、果たしてもう一度あの頃の気持ちを思い出させる事ができるのか。


クロードじいちゃんのボケたふりをするというくだりでクスクスと笑えて、娘や娘婿、そして孫娘といった家族との繋がりにもフォーカスが当てられており、安心して観られる映画になっていると思います。
施設で演劇が行われる事になり、リリィのためにクロードと孫娘が共に画策し、劇を上演するところはこの映画の最高のシーンでした。



リリィを演じたカロリーヌ・シロルのアルツハイマー患者という演技も自然な雰囲気でハマっており流石の一言。
“アルツハイマーになったフリ”のクロード役ブルース・ダーンも御年80オーバーでの熱演。実年齢以上に若く見えました。すげえ。





が、僕には突き刺さるまでには至らなかった、、、。以下、ハマらなかった部分の感情ネタバレです。










キャッチコピーに『かつての恋人のために思いついたのは、アルツハイマーの[フリ]をする一世一代の[嘘]』とありますが、ただ単純にリリィのいる老人ホームに入る為の手段なだけであって、その嘘は単純なエゴというのが残念に思えてしまったところ。
そして当時の記憶を思い出させたい、というのも独りよがりでストーカーに近い思考に感じてしまったのは僕の心が汚れているからでしょうか…。


さらにはリリィには旦那もいて、頻繁ではないとはいえ旦那が面会に来ており、クロードはそれを知っていながらも「こんな施設に妻を入れるなんて愛が無いからだ。俺の方が彼女を愛している!」と切り捨てて、友人のシェーンにもドン引きされるという。
クロードの“当時の事を一緒に分かち合いたい”といった気持ちだけだったとしても純粋に応援ができないよ・・・。このあたりはシェーンと同じ気持ちになってしまった。


クロードとリリィの過去の熱愛についても語られるものの、お互いに深い愛情を注ぎ愛し合ったといったエピソードが深く描写されず、感情移入ができなくて少しモヤモヤ。

僕自身がクロードと同じ歳くらいになって観返したらまた違った感想を持てるのかなあ。
とはいえ冒頭と終盤で描かれるクロードとシェーンの腐れ縁的な友情はとても良かったので、その部分は高評価です。老人仲間とやいやい言いながら暮らす老後には憧れますね。



2021/01/08(金) オンライン試写で鑑賞。
[2021-004]
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